住宅をおしゃれな印象に格上げしてくれる吹き抜け。
昼は太陽の光、夜は星空を身近に感じながら開放感いっぱいに過ごすことができることから、近年特に人気が高まっています。
光や風が上下に抜けるため、機能面でもメリットの多い吹き抜けの家ですが、実際の計画にあたってデメリットや注意点を十分に検証したいという方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、吹き抜けのメリット・デメリット、そして設計時のポイントについて具体的に触れていきます。
吹き抜けのある家のメリット
まずは、吹き抜けのある家のメリットについて見ていきましょう。
明るい家になる
明るさの確保は、吹き抜けの一番のメリットとして挙げている方も多いのではないでしょうか。
例えば、隣の家が近い場合の1階の部屋では、窓がいくら大きくても十分な採光が難しく暗くなりがちです。
このような場合に吹き抜けを設けることで、2階の上の方や天窓などからの光が1階まで届けることができるのです。
また、太陽の高度が低く光が差し込みにくい冬場においても、様々な場所からまんべんなく採り入れた光が部屋の奥まで明るく照らしてくれます。
家を広く感じさせる
広い家にしか設けられないと思われがちな吹き抜けですが、実は狭い家を広く見せることができるのが、吹き抜けの大きな強みなのです。
吹き抜け部分の天井の高さが2層分になること、そして視線に「抜け」を作り開放感が生まれることで、広い空間で過ごしているように感じることができます。
家全体につながりが生まれる
吹き抜けは、通常フロア間を区切っている床をくり抜くイメージで作られることから、家全体の境界をぼかし、空間につながりを生み出してくれます。
例えば2階で親が読書をし、1階では子ども達が遊び回るシーンを想像してみてください。
一見家族がバラバラな時間を過ごしているようですが、吹き抜けを通じてお互いの気配や生活音が伝わり、家族団らんの時間でなくても、同じ空気感の中で安心して過ごすことができるのです。
共働き世帯など、忙しい家族にこそ吹き抜けのもたらす効果が実感できると思います。
健康面で好影響をもたらす
「日向ぼっこ」が健康に良いと聞いて育った方も多いのではないでしょうか?
昔から、日光浴の効果として
- カルシウムの生成を促すことで骨が丈夫になり、リラックス効果が高まる
- ストレス解消になり免疫力が高まる
ということが言われています。
特に後者の項目については、太陽の光が脳内の幸せホルモン「セロトニン」を活性化させ、体内時計も整える効果があるとして近年特に注目度が高まっているのです。
毎日太陽の光がたっぷり降り注ぐ家で過ごすことは、家族の健康にもつながります。
60年以上本物の注文住宅にこだわり続けた
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吹き抜けのある家のデメリット
次に、デメリットについて見ていきます。
2階が狭くなる
吹き抜けを作ることで物理的に面積が小さくなってしまいますので、間取りを工夫する必要が生じるでしょう。
狭小住宅の場合には、設計の初期段階で今一度自分達の日常の行動や生活スタイルを洗い出し、「その活動は区切られた部屋で行う必要があるか?」といったところから検証することをおすすめします。
はじめは吹き抜けを諦めていた場合でも、壁のある部屋をなるべく減らし、空間の大きさに優先順位をつけることで実現できるかもしれません。
住まいの断熱性能を高める必要がある
空間のボリュームが大きくなるため、全体に冷暖房が行き渡るのに時間がかかってしまいます。
空気は暖まると上に、冷えると下に留まる性質を持ちます。
そして一般的に夏の2階や冬の1階は空調が効きにくくなり、居住者に不快感を与えます。
これをカバーするため、住まいの断熱性能を向上させる必要があります。
幸い現在の住まいづくりは高断熱高気密を前提とする方向性が浸透しました。
それにより、冷暖房機器に神経を使わずとも快適に過ごせる住まいづくりも可能になっています。
またシーリングファンなどを併用すると、空気を対流させ温度や湿気を均一にかき混ぜてくれます。
吹き抜け空間のアクセントにもなりますので検討してみてはいかがでしょうか。
掃除が大変
吹き抜けを設けることによって手の届かない箇所が生まれるため、窓や壁、照明の掃除方法を懸念されている方も多いかもしれません。
柄の長いモップを用いるなど、日常のメンテナンスに少し手間を要します。
プライバシー面で検討が必要
吹き抜けによって開放感が生まれる一方で、1階の音が2階に聞こえる、2階を歩く姿が1階の来客から見えるなど、本来であれば遮りたい音や視線までも通してしまうというデメリットがあります。
壁の配置やカーテン・スクリーンの活用など、生活の状況に合わせた方法でカバーすることをおすすめします。
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吹き抜けの設計時のポイント
吹抜けと階段を家の「顔」に
家の「顔」であるリビングを1階に配置し、2階へと続く階段を吹抜けとセットにして配置すると、天井の高いダイナミックな空間がリビングに生まれます。
吹き抜けならではの開放感を最も効果的に感じられる手法であると同時に、日常においてもリビングが生活の拠点となり、常に家族の気配を感じながら豊かな時間を過ごすことができるでしょう。
吹き抜けと「大きな窓」はセットで計画
吹き抜けの近くに大きな窓があると、沢山採光した光を1階、2階両方に届けることができます。
おすすめは、「吹き抜け×リビング×掃き出し窓×ウッドデッキ」の組み合わせ。大きな窓と吹き抜けを通して屋外空間と家全体が一体的につながり、光の降り注ぐ明るい家を作ることができます。
照明計画の注意点
大ぶりのペンダント照明を吹き抜け最上部に配置すると空間にメリハリが生まれ、よりドラマチックな印象を演出することができます。
ただし、吹き抜けのペンダント照明には、コードを適切な長さに調整できるものを選びましょう。
短すぎると照明の位置が遠くなりぼやけた印象となりかねず、長すぎると圧迫感が出てしまいます。
また、シーリングファンを設ける場合には、ダウンライトとの位置関係に注意が必要です。
シーリングファンと近い位置にダウンライトを配灯した場合、ファンの羽の影がダウンライトの光と干渉し、チラつきが発生してしまうのです。
そうなると体調にも関わることになりますので、設計者や工事業者と相談し、各器具の位置関係を調整しましょう。
全体として、吹き抜け空間の照明計画では、フロアランプ等の間接照明を含めた複数の照明を組み合わせると照明効率が高くなり、視覚にも奥行を感じる空間に仕上がります。
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まとめ
・吹き抜けで、小さな家を大きく使う
狭小住宅を広く見せる手法として、思い切って1ヶ所大空間を作ることがおすすめですが、その場合に吹き抜けも非常に有効な手段となります。
家の中で一番広く、良い場所に設定されるリビングルームに吹抜けを設ければ、水平方向・高さ方向ともに視界が開け、広々とした空間に仕上げることができます。また隣接する他の空間に連続させ、その効果を共有させて行く事も可能です。
使える面積が狭いと吹き抜けを敬遠しがちですが、じつは演出効果意外にも機能性能的効果を高めるのに役立ちます。
設計で苦労しただけの効果を、日々の生活で実感することができることでしょう。
・デザイン・機能を両立する計画を
冷暖房効率が低下や照明計画の複雑さ、清掃性など吹抜けならではの難関も登場しますが、技術的に補える様になりました。
上図に計画すれば、機能面のカバーだけでなくインテリアのデザイン性も格段にアップさせることができます。
心理的にも物理的にもメリットの多い吹き抜けは、何より個性的な空間を形成して住まい手の愛着にも繋がります。
設計者や業者と相談の上、その特性を存分に活かした家を作ってみてはいかがでしょうか。