近年、古民家を再生してリフォームすることが注目を集めています。
昔の柱や梁などの構造を生かしながら現代的なデザインを取り入れることでとても魅力的な物件へと生まれ変わります。
しかし、より快適な空間にするためにはそれなりの費用がかかるのも事実。
ここでは、古民家リフォームとはどのようなものか、どのような費用がかかるのかについて説明していきます。
1.古民家リフォームとはどんなもの?
1-1 古民家の定義とリフォームの意義
そもそも「古民家」には明確な定義があるのでしょうか?
実は、「古民家」ということばには明確な決まりがありません。
築50年以上たった建物を古民家と呼んだりもするようですが、これといった決まりは特にないのです。
しかし、築50年程度だとまだそんなに古いイメージではなく、やはり古民家というと戦前の築80年以上経った家や、それ以上経っているような古い家をイメージするのではないでしょうか。
特に、太い大黒柱や大きな梁が架かっていて、囲炉裏の煙で燻されて真っ黒になっているような建物が古民家と呼ばれるにふさわしいでしょう。いわゆる伝統工法(柔構造)による、釘・金物を用いずに木組みで建てられた建物です。
古民家には長い年月を経て蓄積された深みと風合いがあります。それは一朝一夕では手に入れることの出来ない、プライスレスな価値。昔は今と違って大変立派な樹種・木理の材が用いられていました。
それを引き継ぎ、新たなエッセンスを加える事で見違えるほどの輝きを放ちます。そこが古民家リフォームの醍醐味と言えるでしょう。
ただし、簡単にいじっては良いリフォームと言えません。伝統的な木造建築とはどういうものか、それを熟知している専門家に相談することを強くおすすめします。
まずはどういう施工事例があるのか、どの程度の経験があるのか実際に見せてもらうことからはじめてみてはいかがでしょうか。
1-2 古民家リフォームはどんなことをするのか
古民家には希少な文化的価値、豊かな素材と空間構成があります。
その反面、現代の生活に慣れた人々にとっては生活スタイルや居住性能、場合によっては価値観が見合わないことなども挙げられます。この辺りを改善させることもリフォームの命題といえるかもしれません。
具体的には、冬の寒さの改善やプライバシーを適度に保つ空間構成、利便性の低い設備環境の改善、そしてメンテナンス性の向上などがあります。
また、長い年月を経た民家ほど経年での増改築が重ねられていることが多く、それがかえって住まいの状態を悪くしていることがあります。
その辺りの適切な処置も実は重要で、一般の人にはなかなか解りにくい要素であるため、専門家にしっかり確認してもらう事が必要です。
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2.リフォーム内容ごとの費用について
1-2で述べた改善点は、住まいの根本要素に関わるため、大きく費用がかかります。
具体的なリフォーム内容としては、以下のようなものがあります。
- 断熱性能の向上
- 設備機器の更新
- 湿気対策
- 間取り変更
- 外装の見直し
それぞれ順に説明していきます。
断熱性能の向上
冬の寒さ改善は、つまり断熱性能の向上です。
屋根、外壁及び窓、床下の外気に接する部分を保護するのは、面積も大きく手間もかかります。全てをきちんと実現しようとすると1000万円どころでは済みません。
住まい自体の健康を考えると本当はトータルな性能向上が望ましいところです。ですがコストも考慮し、まずは現状を少しでも改善して住み手の負担を軽減させるという視点も大きな効果をもたらします。
例えば利便性の向上も兼ねた窓の断熱・気密化を行い、同時に床下の保護までを改善させるという考え方もその一つです。
既存を撤去のうえペアガラスサッシを取付け、適宜雨戸や面格子を考慮すると、おおよそ150~200万円くらいが目安となるでしょう。
設備機器の更新
次に台所、浴室、洗面、トイレなどの設備機器の全体的な更新があります。
撤去も含めると、腹積もりとしておおよそ200~300万円くらい。さらに付随してこれらの床・壁・天井・建具の内装を変更すれば、下地からいじる事も考えておおよそ100万~200万円くらい見ておきたいところです。
長い年月を経過し、1階の床下は湿気やシロアリの影響で少なからず劣化しています。
また冬場は床下を外気が通り抜け、畳の間は幾分良いにしても板の間は床板1枚で接しており、全体的にすき間が多いため冷気の影響を大きく受けます。
これを機会に床全体を撤去し、床下の断熱も含めてやり直す事もできれば検討していただきたいと思います。
湿気対策
古民家の脚周りは、構造的に重要な要素の一つです。しかし他の部分に比べて点検しにくく、“湿気”という、木にとって一番の大敵に晒され続けます。
今後の安心を考えると費用はもう少しかかりますが、湿気防止対策として防湿コンクリートを敷設するのもおすすめです。
間取り変更
間仕切り(間取り)の変更を希望される方も多いでしょう。
この費用については、家族構成や生活スタイルによって大きく異なるため、一概にいくらという事ができません。
できれは古民家が本来持つ“間”の美しさを壊さず、活かせると良いですね。
まず一般的によく検討されるのが、使いやすく快適なLDKへの変更があります。
現在住み継がれている古民家において、台所は創建当時(土間床の竃)のままではなく、近代的なかたち(間取り)に改修されているケースが殆どです。この場合、台所はケの場所(日常の場所)として他と切り離されていることが多いものでした。板の間と畳の間が混在した続きの広間も、敷居や低い鴨居でやや一体感に欠けるところがあります。
これを見直し、使いやすい空間へと変貌させるリフォームを検討します。
この場合、素材・空間のボリューム感等によって様々ですが、400~600万円くらいが目安でしょう。
また農家型民家でよく行なうのが、大きな小屋裏空間の解放。ハシゴで登り降りしやすい様に大きく開口されていたり、既に階段がついている事もあります。
階段を適切な位置に据え直し、居住空間の延長として建具、窓、収納等を整えたり、空間の魅力を高める表現として一体化する方法です。
ついでに屋根の断熱も考慮し、6~8帖間とした場合に300万~400万円くらいを見ておくと良いでしょう。
外装の見直し
さらに、外装の見直しも検討します。古民家は通常深い軒に守られているため、劣化が少ないと言えます。
しかし、長い年月を経ているため相応の傷みが生じており、下見板張りの外壁の足元あたりは雨や湿気の影響で腐食し、外れかかっているケースも多々あります。
もともと構造柱や梁が露出した古民家は、劣化具合の目視や部材の交換が行ない易く、土壁のため透湿性も高いなどの利点があります。できればその辺りを生かしながら処理が行えると良いです。
また屋根は風格をそのまま残したいところではありますが、地震や台風への備えとして瓦を下ろし、金属板等で軽量化を図るのも一考です。軒裏や軒先の木部が傷んでいる事も多々あります。そういった部分の修繕も含めて考えると、トータルで400万円以上かかるでしょう。
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3.まとめ
古民家は日本の伝統技術の粋が込められた、非常に理に適った構造体です。
太い柱や梁、部材の向きなど一つ一つに意味があります。しかし最近では社会の現代化に伴い、定期的な修繕・更新が行なわれにくくなりました。
基本的に健全な状態であれば、古民家は大地震にも耐えうるポテンシャルを持ちます。ただし場当たり的に繕ってしまうと逆に寿命を縮めてしまいかねません。
古民家のリフォームをお考えの場合は、ぜひ伝統工法に造詣の深い建築会社へご相談されることを強くおすすめします。