人間の生活は衣食住によって成立していますが、そのうちの「食」の部分を担っている場所がキッチン。
料理を作る人が台所に立ち、キッチンカウンターの部分で野菜を切ったり、コンロでお肉を焼いたり、シンクで洗い物したりしてくれることによって、それぞれの家庭での「食」が成立しています。そのため、家の中でキッチンという場所はとても大切な空間です。
しかもキッチンは基本的に毎日使用します。そう、やはり頻繁に使うとなると、その内容にもこだわりたいところです。
デザインや機能性も大事ですが、特に重視して欲しいポイントが実は「高さ」です。
キッチンのカウンター高さを何センチにするかというのは、そのキッチンを毎日使用する人にとっての体への負担を大きく変える要素になります。
今回の記事では、キッチンの高さについての考え方をお伝えします。
1 なぜキッチンの高さが重要なのか
1−1 キッチンが高いと?
キッチンが高いと、キッチンを使う人の料理のやりにくさや疲れやすさに直結してしまいます。
例えば、キッチンがいつも使っているものよりも10センチ高くなった時を想像してみてください。かなり料理がやりにくくなるのではないでしょうか。
特に、包丁を使う場面では包丁に体重をかけなければいけないのですが、キッチンカウンターの高さが高いと、体重がかけにくくなり、包丁に力を込めにくくなってしまい、かぼちゃなどの硬いものを切る時に、余計に力が必要になりますし、バランスがとりにくくなるので事故も起こる可能性が上がります。
さらに、コンロの部分には、「五徳」という、鍋やフライパンをのせる足の部分があるので、さらに高さが上がります。すると、フライパンを振るときに肘や肩が上がって動作が窮屈になり、中の物をこぼしてしまいやすくなったりします。
このように、キッチンが高くなると、料理はやりにくくなってしまうのです。
2−2 キッチンが低いと?
では、逆に低くなるとどうでしょうか。普段使っているキッチンが10センチ低くなったところを想像してみてください。
すると、基本姿勢が前かがみという状態になるので、腰にかかる負担が大きくなります。常に下を見ていることになるので、首にも負担がかかります。
作業の時間が長くなれば長くなるほど、その負担は徐々に体に蓄積していき、肩こりや腰痛に発展してしまいます。
特に、洗い物する際にシンクを使う場合、シンクはキッチンカウンターから1段階低くなっているので、さらに腰を前にかがめなければいけなくなります。ある調査では、キッチンに立って仕事をしているうちの半分の時間はシンクの作業であるということがわかっています。腰にかかる負担の大きい状態で、料理している時間の半分を過ごさなければいけないということです。
一度、ご自身が料理をする際に、キッチンカウンターで作業している時間と、シンクの内部で作業している時間を測ってみるのも良いかもしれません。
そして、シンクで作業している時間が思ったよりも長いという場合は、キッチンの高さを上げることを視野に入れるのと同時に、カウンタートップだけでなくシンク底についてもバランスをみて確認しましょう。
いずれにせよ、キッチンは高くても低くても良くないということです。自分にとって最も丁度良いキッチンの高さを見つける必要があります。
1−3 キッチンの高さは収納にも影響する
また、余談ですがキッチンの高さはその下の収納部分の高さにも関係してきます。キッチンが低くなれば、キッチン下の収納スペースの高さも低くなりますし、キッチンが高くなれば、キッチン下の収納スペースの高さも高くなります。
引き出しの高さなどはメーカーによっても変わってくると思いますので、背の高い物(大きめのペットボトルや油のボトルなど)をしまう際にはそれらがキッチン下の引き出しのスペースに入るかどうかも確認しておいた方が良いでしょう。
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2 適切なキッチンの高さを出す方法
キッチンのメーカーには、キッチンの適切な高さを割り出すための計算式が存在します。
それはずばり、
「身長÷2+5cm」
です。
体の真ん中より少し上ということですね。おへその辺りに来る人が多いようです。
例えば、身長が158cm の人ならば、適切なキッチンの高さは、この計算式に当てはめると84cmとなります。オーダーキッチンであれば、ミリ単位で高さの設定が可能なので、84cmという自分の最も適した高さに設定することができます。
規格型のメーカーキッチンの場合は、基本的に5cm刻みで設定されています。多いのは80cm、85cm 、90cm の3種類です。
この中から、自分に適した高さに近いものを取るという形になります。
先ほどの例にあげた身長が158センチの型であれば、適した高さである84cm に最も近い点85cmを選ぶという形になります。
また、先ほどお伝えしたように、コンロの部分は五徳が使われているので、通常のキッチンカウンターよりも高い位置で鍋やフライパンを操作しなければならなくなります。
そのため、五徳の部分だけ1段階低くするという作り方もあります。こうすることで、鍋やフライパンが使いやすくなるのと同時に、深いお鍋を使った場合も底の方まで見えやすくなります。ただしこういった特殊な作りのキッチンは特注扱いが多いため、簡単にはできない場合があるので確認が必要です。
もちろん、同じ身長の人でもその人によって手の長さや足の長さ、肩の高さなどは異なります。単純に身長で計算している先ほどの計算式では割り出せない部分もたくさんあります。
例えば、手が長い人にとっては、先ほどの計算式で割り出された数字よりも低い高さの方が合っているかもしれません。そのため、先ほどの計算式はあくまでも目安として考えていただき、可能であればショールームに行き、自分に合ったキッチンの高さは何センチくらいなのかということを確認するのが良いでしょう。
■複数の人がキッチンを使う場合の考え方
キッチンを使うのが、その家庭の奥様だけではない場合があります。
例えば、お母様が同居している場合や、ご主人が積極的に料理をされる場合などです。
全員が全く同じ身長ということはありえないので、それぞれの人にとって適したキッチンの高さも変わってきます。
しかし、キッチンの高さは変えることができません。そういった際には、最も高い頻度でそのキッチンを使う人を主体として、キッチンの高さを考えると良いでしょう。
毎日キッチンを使う奥様と、週に1回か2回キッチンを使うご主人であれば、当然奥様の使いやすさを重視するということになります。
また、キッチンを複数の人が使うという場合は、その高さよりも大きさやスペースの方を重視する必要があります。
作業ができるスペースを広く設けたり、通路スペースの幅を少し広めに設定して、すれ違いやすいようにする必要があります。こういったキッチンのスペースに関することは、新築を建てる際や、改修をする際に、あらかじめ家族内で話し合っておくことが重要です。
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3 まとめ
その人にとって最も適したキッチンの高さは、キッチン使用者の「身長÷2+5cm」が適切だと一般的には言われています。
ただし、この計算式はあくまでも参考程度として、実際にキッチンの高さを決める際にはショールームに足を運び、どのぐらいの高さが自分に合ってるのかということを直接確かめるのが1番確実な方法です。
その際には、その場にいるアドバイザーの方にも意見を求めると良いでしょう。満足のいくキッチン選びにつながるはずです。