平屋建の家は、近年見かけることが少なくなってきました。
理由として、もちろん敷地の広さに関する問題もありますが、都市部だけの事ではありません。
高度成長期を経て豊かになると物が増え、家族の住まい方の変化により住宅は使用目的ごとに部屋を設けるようになりました。それに伴い、全体的にある程度の大きさが必要になってきているため、平屋形式で面積確保する事が難しくなっているのです。
昔であればだいたいどの住まいにも和室があり、広めの和室が一室あれば、そこを居間としても寝室として使うこともできました。ずいぶん昔との比較ですので少々極端な話ではありますが、そういった延長線上の変化も多分にあるのです。
部屋数が増えると間取りもシンプルではなくなりますので、平屋の外観デザインを考える際にはこのような事情を踏まえ検討いく必要があります。
今回は、平屋の外観をどのように考えるか、そして失敗しないためにはどうすれば良いかについて解説していきます。
1 平屋の外観デザインの考え方
まずは平屋の外観を考えるポイントについて説明していきます。
1−1 日当たりや風通しを考えたデザイン
それぞれの部屋に日当たりを良くしようとしたり、風通しを良くしようといった工夫を加えようとする場合、建物の大きさにもよりますが、平屋住宅において「全部屋平等に快適に」というのは難しい事が多いです。
2階建て住宅の場合は上階も使えますので、日当たりの良い南に面する部屋が作りやすいですが、平屋住宅は横に並べる必要からどうしても日当たりや風通しに偏りが生じがちです。
そのため、凹凸や中庭を設けるデザインやL 字・長方形といったデザインにして、何とか良くしてゆこうとする工夫が設計段階で行われます。
しかし建物の形を複雑にしたりイレギュラーな設計にすると、その分コストは高くなります。さらにメンテナンス性も悪くなるので、できれば必要以上の変形はお勧めしせん。
1−2 屋根を生かしたデザイン
平屋住宅の場合、同じ面積の2階建てに比べて屋根面積や基礎面積が広くなります。屋根面積が広くなるということは、シンプルに屋根をかけるだけでてっぺんが高くなり、2階の部屋を作れるほどのスペースが生まれるケースがあります。
最近は断熱技術が向上し、快適性を確保しながらそんな上部空間を吹き抜けにすることが可能になりました。木造住宅であれば、太い構造材を使用したダイナミックな構造デザインを施す事も可能です。
勾配屋根を持つ平屋の場合、軒先を深く表現すれば和風のイメージが強くなります。
屋根勾配をある程度の角度以上にして軒の出を抑えれば洋風なイメージになります。
また、日当たりや風通しを良くするために越屋根(屋根の上にもう一段設けた小さな屋根)を設けることもあります。
屋根がシンプルなデザインであれば、越屋根が設けることでデザイン上のアクセントにもなります。
2階建て住宅に比べ、平屋住宅の方が外観における屋根の影響(印象)が大きく出ます。
屋根の形状は間取りの構成や趣向性によってある程度決まってくるのですが、敷地条件(土地環境)や用途地域(法規制)によってもさまざまな制約を受けることがあります。
その制約によって必ずしも希望通りにならない場合もありますが、外観デザインに希望がある場合は設計者に伝え、どの様な原因が考えられるのかを確認すると良いでしょう。
60年以上本物の注文住宅にこだわり続けた
杉坂建築のノウハウを見る
2 平屋建て住宅の外観デザインに多い失敗原因
ここでは、平屋建て住宅の外観デザインを決める際に多い失敗原因について紹介します。
2−1 パーツで決めてしまう
平屋住宅に限った事ではありませんが、全体像をイメージしないままにパーツ(部分)に焦点を当てて外観デザインを決めてしまうケースがあります。
例えば「この素材を使いたい」という事や、室内空間からの設え(窓やエアコン、換気口など)に囚われてしまうなど。一部分に寄ってしまったことによるより起こる失敗です。
2−2 テラスに実用性
もう一つはテラスです。
平屋住宅は2階がないので、当然ベランダがありません。つまり洗濯物は1階の地面に干す事になります。その際にデザイン性を重視するあまりサービスヤードが疎かになったり、あったとしても庇がほとんどなく、洗濯物に鳥の糞などが落ちてきたりする可能性があります。
デザインも大切ですが、その家で生活するという部分も考えて進めなければいけません。
ファサードとして成立させたい面とサービススペースの位置関係、機能性を持たせるための設えとのバランスなども考慮するようにしましょう。
2−3 大きな屋根の排水
平屋住宅は屋根の面積が広くなる事を書きました。
その屋根を活用してソーラーパネルを設置するご家庭もあり、平屋ならではのメリットですね。
ただし、屋根が大きいということはメリットばかりではありません。
大雨が降ったり台風が来たりした時に、その雨を受ける面積も広くなるということです。
降り注いだ雨は雨樋を伝って排水されますが、先ず雨樋のサイズをしっかり検討する事が必要になります。
そして外観上その雨樋(特にたてとい)の取り付け位置がポイントになります。
できれば無い方が良い雨樋ですが、昨今の豪雨や長雨を考えるとそうもゆきません。
雨量が多いときに溢れないようなサイズと数量を考慮したうえで、玄関前やアプローチなど見せ場になる場所に排水桝がボコッと付かない様、立面的にも平面的にも考慮すると良いです。
2−4 窓が広すぎる
2階建て住宅と比べて構造安定性が高いため、広い窓を取ることができる平屋住宅。
窓が大きくても構造的に成り立ちやすいので、ガラスの大きい開放的なデザインにすることもあります。
最初は開放的で良いと感じていても、住み始めてみてから窓が広すぎた事に気づくケースがあります。
「常に誰かに見られているような気がする」とか「外を見ると必ず誰かと目が合う」と感じ、常に周りからの視線を気にして過ごすことも。
せっかく窓を大きく取ったのに、常にカーテンを閉めた生活で気分も害してしまっては元も子もありません。敷地からお求めになって新築する場合は特に、前面道路の人通りをはじめ隣接地の感じなどをしっかり確認しながら検討するようにしましょう。
60年以上本物の注文住宅にこだわり続けた
杉坂建築のノウハウを見る
3 平屋建て住宅のデザイン事例
最後に、平屋建て住宅のデザインをご紹介します。これから平屋を建築予定の方の参考になれば幸いです。
シンプルなデザイン
越屋根デザイン
外観
室内
変形デザイン(横長)
室内(ロフト)
大屋根デザイン
室内(ロフト)
60年以上本物の注文住宅にこだわり続けた
杉坂建築のノウハウを見る
4 まとめ
平屋建て住宅の外観デザインに関しては、日当たりや風通しなどを考慮しようとすれば、やや複雑な作りにせざるを得ませんが、メンテナンス性などを考えると、あまり複雑な作りにするのもお勧めできません。
平屋建て住宅の特徴としては、屋根を大きく取れるという特徴があるので、そこを利用してダイナミックなデザインにしたり、洋風なデザインにしたりすることができます。
ただし失敗の原因としては外壁の素材選びで失敗したり、テラスの設計で失敗したり、雨対策で失敗したり、窓の大きさで失敗したりなどといったポイントがありますので、実際に住むということを意識した上でデザインを考えてみると良いでしょう。