ヒノキ(桧、檜)はスギと並んで馴染み深い木材です。
ヒノキといえば「ヒノキ風呂」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
檜風呂は高級感があり、特有の芳香があり、日本人に愛されている素材です。
檜は浴槽などに使われるほど水分に強く、耐朽性(腐りにくさ)があります。
また、加工性にも優れている一方で、強度もあります。
その耐朽性や強度、さらに虫を忌避する成分を含むことから古来より住宅のみならず神社仏閣の構造材として全国各地で用いられてきました。
フローリングにも適しており、その耐朽性・強度のみならずヒノキ独特の香りもあり、人気が高い木材なのです。
ただし、見た目だけでなくヒノキの持つその性質を理解した上で選ぶことがとても大切です。
この記事では、ヒノキを床材として使うことのメリットやデメリットについてご紹介していきます。
床材選びの参考にしていただければ幸いです。
1.桧フローリングのメリット・デメリット
1−1.メリット
桧フローリングには無垢と突板(合板の上に薄くスライスした材を貼ったもの)がありますが、ここでは素材の持ち味が生きた“無垢”を中心にお伝えします。
・耐久性がある
無垢材は一本の木から角材や板を切り出したものです。
そのため合板フローリングなどでありがちな表層の剥離や床下からの湿気などによる“たわみ”などがありません。
劣化することがほとんどなく味わいを深めて行くことができるのです。
ヒノキは強度と耐朽性を持ちながら加工が容易でもあることから、寺社建築において昔から利用されてました。
実際にヒノキで建てられた世界最古の木造建築物である法隆寺でもその存在を見ることができます。
このようにヒノキは長持ちし、太く厚く用いれば半永久的に張り替える必要がないほど。ずっと住むことを考えればランニングコストを抑えられると言えます。
・色合いが良い
ヒノキは最初は白っぽい見た目ですが、年月を経ることで徐々に味わいのある綺麗な飴色になっていきます。
写真は実際にヒノキのフローリングを使ったものです。
焦げ茶色の家具や建具に比べ、かなり白っぽいですね。
ですが節のある材も年月と共に徐々に色づき、濃い部分との差がなくなって相性が良くなって来ます。
またここでは節の多い材を採用しています。「節はちょっと…」と言う方もいらっしゃると思います。
節の無い材は大変上品で、それはそれでお奨めです。
節のある材は、比較対象によりますが無節材の1/2~1/3ほどの価格になりますので、コスト的な魅力があります。素材自体の性質や耐久性には遜色ありませんのでこちらもお奨めです。
・足触りが心地良い
無垢材のフローリングはとても「足触りが心地よい」という特徴があります。
フローリングの生活をしている方であれば、夏は「ベタつく」ような感じがするのではないでしょうか。
そして冬になると「ヒンヤリ」として足元が冷える、そのような経験があるかと思います。
ヒノキのような無垢材は熱伝導率が低いので断熱効果があります。
また、自然素材の調湿力という湿度を調整する効果もあります。
こうした効果により、夏は涼しくさらっとした足触りを感じるだけでなく、冬は冷たさを感じることがなく快適に過ごすことができるのです。
この点は同じ桧でも突板フローリング(合板)と異なるところです。
・独特の風合いを感じることができる
無垢材は素材が持つ性質上、傷がつきやすいという特徴があります。
しかし多少の傷は年月が経つほどにむしろ独特の味わいとして感じることができる様になります。
これも合板フローリングとの大きな違いと言え、完全自然素材ならではの魅力です。
また、どんな素材でも年月とともに劣化していくものではありますが、ごく普通に使用していればそれを気にする必要はありません。
・リラックス効果がある
檜風呂に入ったことがある方は、ヒノキの香りに癒されたという経験があるのではないでしょうか。
このようにヒノキの持つ独特の芳香は気持ちをリラックスさせる効果があります。
この効果を持つ成分としてヒノキチオールが挙げられますが、香り以外にも高い抗菌効果を持つのが特徴です。抗ウィルス作用も確認されており、住環境にとって非常に優れた素材と言えます。
1−2.デメリット
・変形が生じる
これは無垢材全体にいえることなのですが、調湿作用があることで、木が収縮や膨張し隙間が生じたり、反ってしまったりすることがあります。
そのため、合板フローリングに比べ「安定性」という面では見劣りしてしまいます。
変形を防止するため、製造工程では乾燥を適切に行い、木材の含水率を一定以下に保つ処理が行われています。それでも一定の変形はやむを得ず、無垢材本来の特性として踏まえていただくことが必要です。
・合板フローリングと比べて値段が高い。
これも無垢材全体にいえることなのですが、合板フローリングよりも割高になります。
先にも書きましたが、無垢材は合板と異なり原木から切り取ったものをそのまま使用するため、使用できる量が限られており材料費がかかってしまいます。簡単に言えば素材を贅沢に使用するという事です。
また、製材には機械を使用しますが、無垢材の方が行程ごとに職人がついて作業を進める度合いが高く、より多くの人件費がかかります。
上に少し述べましたが、桧フローリングには主に節の有無とその量によってグレードが分かれます。
「色合い」の項で載せた写真は“一等材”、「足触り」「風合い」の項で掲載した写真は“無節”。
これ以外に、節はあるが量が少ない“上小節”などがあり、選び方によって価格が大きく変わります。
また、合板に桧を薄くスライスしものを貼った突板フローリングが実は良いお値段します。産地や仕様によってては桧無節の無垢フローリングに匹敵する価格のものもあります。
桧を突板で仕立てる場合、節有りの製品を造らず無節とする事が殆どです。無節は一本の木の良い部分からしか取れませんので、突板であっても希少価値が高いと言えるためです。
予算的にすべての部屋をヒノキフローリングにするのが難しいのであれば、居室のみをヒノキのフローリングにし、クローゼットや水廻りなど他の空間を合板にするといった使い分けによってコストダウンを図ることができます。
しかし、先述のとおりヒノキは「耐久性」に優れていることから、導入にコストがかかるものの長年で見れば意外と高くないことに気づきます。
・床暖房に対応しているものが少ない
他の樹種の無垢フローリングに比べ、床暖房に対応した商品構成が少ないです。
こため床暖房を検討しているのであれば高価になってしまうということも頭に入れておくとよいでしょう。
節有りのものは高価ななかでも比較的リーズナブルですので、相談してみることをおすすめします。
・着色が難しい
ヒノキは「火の木」とも言われるほど油分を多く含むため塗料が浸透し辛く、着色が難しいです。
好みの色に着色したい場合はぜひ相談するようにしましょう。
60年以上本物の注文住宅にこだわり続けた
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2.お手入れの方法
ヒノキのフローリングは定期的に独特の風合いを長く味わうことができます。
普段は雑巾などで乾拭きをする程度で十分です(無垢材は水に弱いため水拭きはおすすめしません)。
大掃除などではきちんと固く絞った布で拭き、最後に乾拭きをして仕上げましょう。
ワックスや塗装を行っている場合はご自身の判断でやってしまうとムラの原因となってしまう可能性があるため、施工店に確認してお手入れをするようにしましょう。
また、年月とともにキズはついていきますが、どうしても気になるキズが出来てしまった場合は、目の細かいサンドペーパーなどで適度に擦ってあげると綺麗になります。凹みが生じた様であればその上に水滴を載せておくと木の復元力に期待する事が出来ます。濡れぞうきんを用いる手もあります。
また染みに関しては軽度或いは早期のものなら消しゴムやお酢、しつこい様であれば激落ちスポンジを用いても良いです。このほかカビキラーやマジックリンを使う手もありますが、やりすぎると逆に変色などの原因になってしまいますので施工店に確認しましょう。
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3.まとめ
ヒノキのフローリングは、一般的な合板フローリングに比べ高価であり、また安定性という面では劣る部分があります。
ですがその耐朽性や無垢材のもつ調湿性(快適性)、独特の芳香によるリラックス効果、そして年月と共に深まる味わいなどを総合的に踏まえれば、合板フローリングより優れた点が沢山あります。
簡単に言うと、人に優しく心地よい。最終的にはこれに尽きるのではないでしょうか。
家は人生の中で長い間いる空間です。ぜひ、後悔のないよう、あなたに合った床材を選んでください。