一言で二世帯住宅と言っても、様々な種類があります。
住宅の全てを共有部分として使う「完全同居型」や、設備の一部を共有する「部分共有型」などがあります。
この記事では、その中でもやや特殊な「完全分離型」についてご紹介しますので二世帯住宅を検討している方の参考になれば幸いです。
1 完全分離型二世帯住宅とは
二世帯住宅で暮らすということを考えた場合、どうしても問題になってくるのが人間関係やプライバシーの問題です。現在は少なくなりましたが、昔は旦那さんの実家にお嫁さんが来て一緒に暮らすというタイプの完全同居型二世帯住宅が多かったです。
その場合、よく話題になるのが嫁姑の問題です。お嫁さんは、旦那さんのご両親に気を使い、お姑さんは、お嫁さんの料理の味付けや、子育ての方法に、つい口を出してしまいます。
同じ家で暮らしているため、お嫁さんは旦那さんにプライベートな話もしづらくなってしまいますし、逆もまた然りです。
そのような問題を解決したのが、完全分離型二世帯住宅です。
完全分離型とは、その名の通り、玄関から居室、トイレやお風呂などといった全ての設備まで一通りの要素を、一棟の建物に各世帯別に設ける形態のことを指します。
わかりやすく言えば、二世帯まで入れるアパートやマンションのようなものです。アパートやマンションは、玄関も含めて全ての区間は隣の部屋と別れていますよね。
ただし、アパートやマンションと異なるのは、2つの世帯がお互いに行き来できる扉を1つ設けなければいけないということです。法律上、この扉を設けない場合は「長屋建て住宅」とみられ、いくつかの基準をクリアしなければならなくなります。
60年以上本物の注文住宅にこだわり続けた
杉坂建築のノウハウを見る
2 完全分離型二世帯住宅の種類
完全分離型二世帯住宅には2つの種類があります。
1つが「上下階分離型」、もう1つが「左右分離型」です。
上下階分離型は、2階建ての住宅を1階と2階部分で区切り、1階と2階それぞれに居住するための設備を設けるというタイプです。お年寄りが階段をのぼる危険を避けるために、1階を親世帯に、2階を子世帯にするケースが多いです。
ただし、2階を子世帯にすると、小さなお子さんが走り回ったりした際に、下の階に騒音が発生する可能性があります。また、1階と2階のアクセスを内階段にするのか外階段にするのかの違いによって、床面積の配分に違いが生まれます。
左右分離型は、親世帯と子世帯が壁を介して横に分離するという方式です。それぞれの世帯が隣り合った2階建ての家屋に住んでいるようなものです。この場合は、それぞれの世帯に階段が必要になるため、生活に使える面積が狭くなってしまうことや、親世帯も階段を使わなければならないというデメリットがあります。
60年以上本物の注文住宅にこだわり続けた
杉坂建築のノウハウを見る
3 完全分離型二世帯住宅のメリット
完全分離型二世帯住宅は、他の二世帯住宅と比べて特徴がはっきりしており、メリットやデメリットも明確です。まずは、完全分離型のメリットについて見ていきましょう。
3−1 建築費や光熱費が世帯当たり安くなる
子世帯や親世帯単体では、家を建てるための費用を捻出することができなかったとしても、2つの世帯を合わせることによって、家を建てることができる場合があります。
完全分離型なので、実際は一緒に住む必要がなく、お金の面だけ協力し合えるという部分で完全分離型の二世帯住宅は一般的な2世帯住宅と、核家族住居のいいとこ取りと言えるかもしれません。
3−2 生活習慣が違っても問題ない
就寝時間や起床時間、ご飯を食べる時間や帰宅する時間、お風呂に入る時間など、生活習慣が異なったとしても、支障が生まれません。
同居型の二世帯住宅であれば、お互いに生活習慣の違いにはかなり気を使わなければいけません。トラブルの元になることもあるので、この部分は大きなメリットです。
3−3 料理の味が違ってもOK
キッチンも別々に存在しているので、ご飯はそれぞれの世帯が別々に食べることになります。
料理の味付けが違うという小さなことがコツコツと積み重なると、日常の大きな不満になってしまうこともあります。些細なことかもしれませんが、こういった小さなリスクを回避できるのも、完全分離型のメリットです。
3−4 お互いに助け合うことができる
これは二世帯住宅共通のメリットともいえますが、もう一つの世帯が壁や天井介してすぐ近くに住んでいるので、何か異変があればすぐに気づくことができます。
また、別々に住んでいながら、何かトラブルがあった時にすぐに駆けつけることができるので、助け合いがしやすいです。
例えば、親世帯が何か重い荷物を運ばなければいけない時に、子世帯に手伝ってもらったり、子世帯の子供が早く帰ってきた時に、親世帯に面倒みてもらったり、さらには将来的に親世帯を介護したりすることがしやすくなります。
3−5 ローンや税金の優遇される
住宅ローンを借りる際に、子供の名義で借りようとすると、収入基準に不足がある場合があります。その際には、親の収入も合わせて審査してもらえるので、有利になります。
また、相続税に関して2015年1月に法律の改正があり、完全分離型の二世帯住宅でも相続税が減額される特例が適用されるようになりました。
60年以上本物の注文住宅にこだわり続けた
杉坂建築のノウハウを見る
4 完全分離型二世帯住宅のデメリット
メリットの多い完全分離型二世帯住宅ですが、二世帯住宅という特性上、デメリットも存在します。
4−1 広い土地が必要
同居型の二世帯住宅であれば、キッチンやお風呂は1ヶ所で済みます。
しかし、完全分離型の二世帯住宅の場合、それぞれの世帯に全ての設備が必要になるため、住宅を建てるために必要になる敷地面積が広く必要になります。
4−2 建築費用が高くなる
キッチンやお風呂などの設備機器がそれぞれの世帯ごとに必要になるため、建築費用が高くなります。
設計によっては、一軒屋を2棟建てるのと変わらない金額になってしまう場合もあります。その場合は、そこまでして二世帯住宅にこだわる必要があるのかということまでさかのぼって考えなくてはなりません。
4−3 騒音が気になる場合がある
音の問題があります。生活習慣が違っても問題ないと言っても、片方の世帯が寝ているときに、もう片方の世帯が騒がしくしていたら迷惑です。
上下階分離型で、上の階に住んでいる子供世帯のお子さんが飛び跳ねたりすれば、その音が下の階に大きく響くことがよくあります。
左右分離型の場合は、互いに行き来するためのドアから音漏れすることがあり、それがストレスの元になります。建築段階で防音対策をしっかりしなければいけませんが、防音対策はコストに大きく反映されるので、金額面の確認が必要です。
4−4 将来的にスペースを持て余す可能性がある
将来的に、親世帯が亡くなってしまったあと、空いたエリアをどのように活用するかが問題になります。
同居型の二世帯住宅であれば、そのまま子世帯が使えますが、完全分離型の場合はそのような使い方ができません。
兄弟の世帯が引っ越してくる、人に貸し出すなど、いくつかの方法があると思いますが、しっかりと考えておかなければ将来的に持て余してしまうことになります。
60年以上本物の注文住宅にこだわり続けた
杉坂建築のノウハウを見る
5 まとめ
完全分離型二世帯住宅は、その他の二世帯住宅の形式に比べると費用が多くかかりますが、その分たくさんのメリットがあります。この方式は、完全な同居ではないため、息子世帯との同居に適しています。
長く一緒に住んでいく上で、精神的に安定して暮らせるということは非常に重要な要素になります。お互いの世帯に思いやりを持ちつつ、話し合いや検討を重ね、資金面や予防面との兼ね合いを考えながら家づくりをしていくといいですね。
※二世帯住宅を検討している人が知っておきたいメリットとデメリットについても併せてご覧ください。