家族や来客とのコミュニケーションが取りやすくオープンなイメージから、近年ではすっかり人気のスタイルとして定着した対面キッチン。マイホームの計画やリフォームにおいて希望している方も多いのではないでしょうか。
今回はメリット・デメリットの両面をふまえた対面キッチン導入のポイントをご紹介したいと思います。
対面キッチンのメリット
まずは対面キッチンのメリットについて見ていきましょう。
家族の様子を見ながら調理できる
キッチンに立っている状態で家族の集まるスペースを見ることができるため、子供の見守りができる他、作業をしながら家族のだんらんに加わることもできます。
無理なく多くのコミュニケーションが取れることは、家族にとって最も大きなメリットとなるのではないでしょうか。
来客を放置しない
友人を招いて食事やお茶を楽しむとき、給仕や片付けのタイミングでどうしても食卓から席を立たなければならないときが出てきます。
ホストがキッチンまで席を外すことは、招かれた側も気を遣うものです。対面キッチンであれば、お互い顔を見て話しつつ、さりげなくキッチンにも行き来できます。
配膳がスムーズ
友人の来訪時だけでなく、日々の食事の配膳の際、その都度出入りを繰り返すことは作業効率上も良いとは言えません。
お皿を次々とスムーズにテーブルに出してゆけるスタイルは、家族の協力も得やすくしてくれます。
キッチンスペースをある程度隠せる
対面キッチンには、腰壁と下がり壁で仕切ったセミオープンスタイルがあります。
このスタイルは、腰壁の高さや下がり壁の下がり具合によってダイニングからの見え具合を制御する事ができます。
そうすればキッチン内がいくらか乱雑でも良しとできますし、腰壁の高さによってワークトップ上の洗い物や洗剤類を隠せる効果もあります。
部屋が広く感じる
キッチン上部の吊り戸棚をなくしたオープンスタイルなら、ダイニング、リビングと一続きの大きな空間に見せることができます。
床面積や敷地の限られた住宅の計画において見逃せないメリットです。
対面キッチンのデメリット
次にデメリットについて見ていきます。
LDKの面積確保が必要
食事室の中にキッチンを配置する一体型がありますが、それに比べるとキッチンスペースをリビング、ダイニングから独立して確保する分、床面積を多く必要とします。
一体型は空間効率が良く、整理整頓の考え方や生活スタイル、レイアウト方法などによって問題無ければメリットがあります。
キッチンの片付けに気遣う必要がある
オープンにする度合いによっては、キッチンの中をきれいに保っておく必要があるということ。
片付けが苦手な方は、セミオープン化を検討してみると良いでしょう。
キッチンの音や臭いがリビングに届きやすい
揚げ物や焼き魚など、音や臭いの気になる調理過程がリビングまで伝わってしまいます。
レンジフードの機能によって結構抑える事が可能ですが、完全に抑制するの困難です。
対面部分に開閉可能な戸を設ける考え方もあります。
来客を招くスペースを兼ねたり、リビングに書斎コーナーを設けるなど様々な理由から明確に臭いの制御を行いたい方は、キッチンの配置をじっくり考える必要があります。
油・水が飛び散りやすい
音や臭いと関連しますが、油や水などもダイニングに飛び散る可能性があります。
霧散する油煙はレンジフードの性能でかなり取れますが、これも完全には難しく、少しずつ拡散してしまいます。ですが簡単でも日常的な清掃を心がければ、それほど心配するほどでは無いでしょう。
収納が少なくなりがち
少なくなりがちではありますが、他のスタイルに比べて凄く劣ると言う事もありません。
対面側をどこまでオープンにするかによります。
上吊戸棚をなくした場合にはその分だけ収納スペース減ります。
ただ、現在居住しているお住まいで吊り戸棚がどの程度活用されているか、物を仕舞っていた場合でもその重要性がどの程度あるかについて検討してみると良いでしょう。
対面キッチンを導入する際のポイント
対面キッチンの配置にはいくつか種類があります。
導入の際のご参考にしてみてください。
【I型対面】
採用率が高く、現代では最もオーソドックスなスタイルです。
シンクからコンロまで1列に並んだユニットが、ダイニングスペースに対面する様に配置されます。
コンロ側を壁にくっつけ、シンク側から出入りするのが一般的。
対面側には腰高の隔て壁を、吊り戸棚がある場合には下がり壁を設けるのが基本。キッチンユニットを振り返った背面側にカップボードと冷蔵庫を配置し、収納量もそこそこ確保可能です。
【アイランド】
「アイランド(島)」の言葉の通り、シンク・コンロ等が完全に独立し、どこも壁と接していないキッチンのこと。
対面キッチンスタイルの中で最も開放感があり、生活感を感じさせないオブジェのようなキッチンと言えるでしょう。動線面でもキッチンの周りをぐるりと回れるため、複数名でキッチンに立つ際にも移動距離を短くできます。
開放感がありLDK全体をとても広く見せられる反面、割とスペースをとるスタイルでもあります。
ワークトップ自体が対面側までフラットに伸びたデザインになりますので、それを利用して対面側にカウンターチェアを置いたり収納にするデザインもあります。
華やかさがある点に比例してコストも他と比べて一番かかるスタイルです。
【ペニンシュラ】
アイランドキッチンと似たスタイルで、左右どちらかが壁についた状態の対面キッチンです。
コンロの横に壁がある配置が多く、油の飛び散り対策としてガラスやパネルのガード壁が設けやすくなります。また換気扇も壁付けができるため、固定や排気ダクトの取り回しが行いやすくなります。
オープンでありながらアイランドよりもスペースを抑えられるため、狭小住宅にもおすすめのプランです。
【セパレート(Ⅱ型)対面】
シンクユニットとコンロユニットが別々になったのがセパレートキッチンです。
片方を対面側に設け、もう片方を背面の壁に接して設けます。換気扇設置上或いは汚れ対策の点でコンロユニットを背面設置することが多く、またシンクを対面設置した方が広々と使えます。
住まいの全体計画のなかでキッチンスペースがシンプルに取れない場合に重宝するスタイルです。
2つのユニットそれぞれ(シンク脇とコンロ脇)に作業スペースがありますので、他のスタイルよりもトータルで作業スペースの面積は増えますが、洗って刻んだあと空中を渡ってコンロ側へ移す必要がある点で動作が大きくなります。またキッチンセットのコストも割高になります。
収納庫とのバランスに注意しましょう。
【L型対面】
I型、或いはペニンシュラがL型になったスタイルです。
L型の良いところはワークトップのコーナー部分が作業スペースとして広く使える事。そしてシンクとコンロの距離が近くなる事。
様々な配置が想定可能ですが、住まいの間取り全体の中での配置が難しくなる事があります。
L型に曲がっているということは、一般的に対面部分の間口が狭くなります。そうしたときにダイニングとうまく組み合うかがポイントになります。また人が立つスペースが広くなるかL型になり、収納や冷蔵庫の配置もイレギュラーになります。
レイアウトによっては最も面積を要するスタイルであるとも言え、L型ありきだと全体計画が難しくなる事もあります。逆に個性的な間取りにハマる事もあり、LDからの見え方や奥まり方、収納との配置バランス、他の水廻りへの回遊性など、工夫次第で活きる事もあります。
更に、L型を延長して「コの字」にするプランもあります。単にカウンターを伸ばすだけで無く、トール型の収納を接続したり、いろいろなデザインが可能です。
ただこれは特殊な造りになりますので、キッチンに特別なこだわりがある方に向いていると言えるでしょう。
【各スタイル共通①:対面カウンターの高さを考える】
対面キッチンの「顔」となる対面カウンターはデザインして表情を浸ける事もしばしば。LDK全体の中でも中心的な位置づけになります。そのためカウンターの高さを家族でしっかりと検討することをおすすめします。
手元の目隠しやカウンター下収納を大切にする場合は高さを1mほどに。カウンターを段差無く広々と活用したい場合は85cmほど。やや特殊ですがダイニングチェアを共用して軽食できるカウンターとしても活用したいなら、一段落とした70cm(ハイチェアを別置きするなら落とさなくても良いです)を組み合わせます。
また、家族でキッチンに立つことを想定する場合、それぞれの身長や使い心地も検証してワークトップ高さを設定すると思います。それも加味して検討すると良いでしょう。
【各スタイル共通②:収納の設定】
対面側の収納には、垂れ壁やオープン吊り棚という方法があります。
垂れ壁は、要するに「I型対面」の項目であった様に、基本形の吊り戸棚を組み込むタイプです。対面カウンターの上部に天井から50~70cmほど下がった壁がつきますので開放感が減ります。
垂れ壁の下がりを小さくすれば開放感が増しますが、吊り戸棚の高さも小さくなると共に取付位置も高くなります。どれくらいオープンにしたいかに依って差し引きします。
吊り戸棚をユニットで設置する場合は基本寸法がありますが、造作の棚とすることで垂れ壁の下がり細かく設定し、開放感を調整する方法もあります。
オープン吊り棚は、カウンター上部に設けワイングラスなども架けられる、カフェやバルなどにある棚のイメージです。
観葉植物なども置いてインテリアのアクセントにしたり、「見せる収納」として活用できます。
但し清掃上の懸念がありますので、スタイル重視の方にお勧めです。
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まとめ
対面キッチンのメリットとデメリット、導入の際のポイントを紹介しました。
・明るくコミュニケーションの取りやすいLDKになる
・ある程度内部を隠す事ができる
といったメリットの一方、詳細なスタイル設定によっては臭いや音、収納などの面で課題も浮かびました。
片付けの手間を減らしたい、収納をできるだけ多く設けたい、という方は対面キッチンの配置の種類のうち、壁を多く活用するスタイルを検討することをおすすめします。
ただ一長一短がありますので、今まで馴染んできたスタイルとその問題点、全体計画の中で重視する事との優先順位などもしっかり踏まえながら検討してみてください。
調理も日々の生活も楽しめる、素敵なLDKが作れるよう祈っています!