「無垢材とはなんだろう?」
家や家具を購入するときに「無垢材」という言葉を聞いて疑問に思われた方いるのではないでしょうか。
なんとなく、「木の暖かみがあって良さそう」ということは感じるけど、そこまでよく分かってない。そんな方が多いかと思います。
この記事では、そもそも無垢材とは何なのか、どういう良さがあり、逆にどのようなデメリットがあるのか、そしてどのような用途に使われているか、といったことを解説しますので、理解を深めて素材選びの参考にしてください。
1 無垢材とは?
建築物や家具等に用いられる素材の中に「無垢材」と呼ばれるものがあります。
「無垢」という言葉を聞くと、「純粋」「汚れていない」などのイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか。
無垢材とは、基本的に原材料そのものを切断/切削加工したままの状態で供給されるものを指します。
木材で言えば、丸太を切断/切削して実際に現場で使用出来る形に整えた材になります。
つまり、接着による張り重ね・継ぎ足しや細断して圧縮(圧着)されていない材とも言えます。
そのように聞くと、多くの方は「あれ、それって普通の木材の事じゃないの?」と感じると思います。
しかし実は、現在一般的に流通している木材の中で、こうした無垢材は意外と少ないのです。
木を使用した素材には実に様々な種類がありますが、大きく分けると「ソリッド構造」と「フラッシュ構造」の2種類に分けられます。
そして無垢材は、「ソリッド構造の素材の中の1種類」に該当します。
それぞれについて次で説明します。
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2 ソリッド構造とフラッシュ構造
2−1 ソリッド構造
ソリッドとは「固体の」「中が密に詰まった」という意味を持つ英語です。
ソリッド構造と言うのは、その単語そのままを理解して頂くのが最も早いと思います。
つまり、「中身が詰まった素材」、言い換えれば「中身が空洞になっていない素材」のことを指します。
無垢材はそれ自体ソリッドですので構造というのも変ですが、このソリッド構造に該当します。
この他にも、
・集成材
・MDF(中密度繊維板)
・パーティクルボード
・ランバーコア材
といった加工材もソリッド構造に該当しますが、これらは無垢材ではありません。
2−2 フラッシュ構造
フラッシュ構造は、ソリッド構造の逆の作り、つまり「中空になった素材」のことです。
細い角材で日の字や田の字に骨組み(芯材)を作り、両面から薄い面材で挟み込んだものが良く見られます。
中身が空洞なので持ち運びに優れ、しかも反りやゆがみなどの狂いが生じにくいという特徴があります。
材料の木材が少なくて済むため環境に優しいとも言われますが、接着剤をはじめとする化学品の利用も考慮すると実際のところ難しい判断です。
ぱっと見は「木製家具」でも、実はフラッシュ構造の家具というのは驚くほど多いです。
内装建具に用いられることも多く、叩くと軽い音がするので分かると思います。
フラッシュ構造のなかには、外側の面材に美しい木目や凹凸加工された塩ビ系シートを使用し、本物っぽく加工している場合もあります。
一概にソリッド構造とフラッシュ構造のどちらがいいとはいえません。
建築のプロはそれぞれの一長一短を理解した上で、使用目的や環境に応じて使い分けています。
とりあえずここでは「無垢材」の利用が意外なほど少ないということがご理解頂けたかと思います。
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3 無垢材の強み
ここまでご説明してきたように、無垢材とは最も原始的な木材の使い方であると同時に、建材が普及した現代においては活用が少なくなっていることもお分かりいただけると思います。
では、その無垢材の強みは一体どんなところにあるのでしょうか。
3−1 本物の木材だけが持つ木のぬくもりや重厚感
現在、表面だけを非常にリアルに加工して本物の木のように見せた合板が普及する様になりました。
そんな中でも、やはり本物の木材である無垢材の放つ重厚感は特別なものです。
実はぱっと見た瞬間、意外と人間はそれが本物かどうかを本能的に区別してしまうものです。
自然材ならではの規則性のない本物の木目や木の節などは、高級感と木の温かみを生み出します。
そして一定の厚みや幅で用いられたものならではの深みが醸し出されます。
そこに漂う原始的な存在感と、ある意味での野性的な佇まいは、見た人の心を刺激しインパクトを与えます。
3−2 丈夫で耐久年数が長い
丈夫であることも無垢材の大きな強みです。樹木は、地面に根を張ってその巨体を強靭な繊維の結合によって支えています。
並の合成素材であれば、あれだけ大きく重い状態になれば、自分自身の重さを支えきれなくなり、崩れてしまうでしょう。
そのような意味で、木は自然のそのままの状態が最も強度が高いと言えます。
特にプロの間で「芯持ち材」と呼ばれる年輪の中心部分が入った無垢材は強度が高く、家の柱などにも利用されています。
それだけの強度と耐久性があるため、無垢材が使用された古い家屋や家具は現在でも作られた当時と遜色なく使用することができ、アンティークとしての価値も付加されるのです。
3−3 使い込むほどに味わいが出る
無垢材は、経年と日光の照射によって風合い(色合い)が変化します。
木の種類によって色の濃淡は変わりますが、どちらにしても切り出してすぐには出ない色合いです。
使い込んだ無垢材にしか出せない独特の味わいがあります。
これは無垢材を用いる上での醍醐味と言えます。
3−4 修理が容易で、削り直しによって新品の状態に戻る
無垢材は、湿度や保存の状態によっては、反ってきたり、歪みが生じたりします。
しかしそんな時も、反ってきた部分や歪みが生じた部分を鉋(カンナ)で削って、再度表面加工を施すことで、新品同様もしくは新品以上のツヤを出すこともあります。
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4 無垢材の弱点
4−1 重い
無垢材の強みでもある重量感ですが、持ち運びをする際にはネックになります。
軽い合板の家具に慣れた現代人は、無垢材を使用した家具を持った時にその重さに驚かされることも多いそうです。
その重量感こそが無垢材らしさでもあります。
4−2 反りや割れ、歪みが出る場合がある
木は切り出した後も呼吸をしていますので、湿度や状態によっては反ったり歪んだり、最悪の場合割れてしまったりします。
特に若い木から切り出した無垢材は、年月の経過とともに歪みや反りが生じやすくなると言われています。
しかし、一方で様々な修復の手法が考えられるという強みもあります。
マメにメンテナンスをしてあげれば末永く使って行くことができます。
4−3 大量生産できず、価格も高い
無垢材の機械加工も確立していますが、ラインに乗せて効率的に、というわけにも行かないところがあります。
人間の手作業を挟みつつ目で確認しながら、切り出しから加工、組み立てを行います。このため一括管理の量産には余り向きません。
また、薄く細かくして作り出される材料よりも1本の木から生み出される製品数が圧倒的に少なくなります。
こうした理由により価格が高くなってしまいます。
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5 無垢材が適している用途
5−1 建物の構造材
例えば法隆寺は日本最古の木造建築物ですが、もちろん無垢材が使用されています。
1300年以上経ってもあの大きな建物を支え続けているのは、無垢材に確かな強度があるからに他なりません。
無垢材以外の複合材はどこかに必ず接着剤が使用されており、接着剤は木よりも早いスピードで劣化して行きます。
無垢材の場合は、腐食や湿度にさえ気を付けていれば、何百年にもわたり、強度を保ち続けることが可能なのです。
また、自然な木が持つ柔軟性は地震が起きた時の揺れにも強く、建物全体にかかる負荷を「しなる」ことで分散させてくれます。
さらに無垢材自身には湿度調節機能が備えられていますので、結露を防ぎ、建物の耐久性を維持してくれます。
一方、近年は集成材も構造材として大幅に普及する様になりました。
集成材の特徴として、寸法や強度が安定し、狂いや伸縮が起きにくい点が挙げられます。
これは、木材が持つ繊維方向を分断して再集成させることで、木目によって生ずる変形から解放し、いわゆる“束ねて”接着することで生み出される、三本の矢の様な強さにあります。
また樹木から取り出す材寸が無垢材よりも小さくて済むため、比較的無駄が抑えられる点もメリットと言えます。
ですがより永く用いたときに得られる風合いや愛着の面で見た場合、無垢材との違いが出て来ます。
例えば築年数の古い民家の構造材は、「古材」として再利用して魅力的な空間づくりに活かされます。ですが集成材の場合、再利用したい、残したいという気持ちになるかどうか..。そんな感覚に訴える部分も価値としての判断基準の一つになります。
5−2 家具
家具においてもその耐久性の高さは評価されています。
合板と違い、表面のシートがはがれたり、接着剤が劣化したりということがないため、何世代にもわたって使い続けることができます。
古い箪笥やアンティーク家具を思い浮かべてください。
どれも経年による深い味わいがありませんか?
無垢材は何年も使い続けることで味わいが増し、新品の時とは違った良さがにじみ出てくるのです。近代的な家具にはない上品な味わいが生まれます。
また古くなってちょっとガタが生じても、解体して補修し、再度組み立てれば新品同様どころかそれ以上の輝きを持って復活させられるのも強みです。
5−3 フローリング
劣化への耐久性が高いので、長期的に見ればランニングコストが安く済みます。また、上記でも触れたように無垢材には湿度を調整する機能が備わっています。このため快適に過ごすことができ、脚触りも良いので、フローリングにも適しています。
古民家や洋館を訪れた時に見ることができる「時の経過を湛えた味わい」は、無垢ならではのものです。
5−4 造作材
造作材とは、建物内部の仕上げ材のことで、床・壁・天井といった面の部分を縁取る巾木や廻り縁、ドア枠・鴨居/敷居のほか、部分的に造り込む階段、カウンター/棚、手すりなどを言います。ポイントとなり、手足が直接触れる部分でもありますので、雰囲気を高める効果や、肌触りの良さを持たせる様な部分に向いています。
但し造作は手間が掛かりますので、コストを抑えたい場合や階段など寸法安定性を持たせたい場合には集成・積層材やMDFなどにもメリットがあります。
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6 まとめ
このように無垢材には、合板には無いさまざまな特徴と、メリット/デメリットがあります。
それらは根本をたどればすべて「耐久性の高さ」と「見た目」の2点に集約されます。
初期費用は合板に比べれば高いですが、その高い耐久性やメンテナンス性を考えると、ランニングコストは圧倒的に高くなるので、長期的に考えれば無垢材の方が優れていると言えるでしょう。
また、使用するシーンにもよりますが、やはり樹木本来の温かみが出る無垢材は、他にはない安心感もありますので、今後家具や建物の購入を考える場合は、無垢材のメリットを想い起こしてみてはいかがでしょうか。