「土地は巡り合わせ」と言われますが、実際に探してみるとまさにその通りで、すぐに理想の土地が見つかる人もいれば、なかなか見つからない人もいます。
土地を選ぶための基準は、非常に多くの項目があります。
コストとの折り合い、利便性、方位、接道、周囲環境など、他にも様々なものがあります。
今回は建物を建てるときに守らなければならない「法規」についていくつか確認しておきたいポイントをご紹介したいと思います。
専門的でやや難しい内容となりますので、しっかり理解するというよりも「こういったものに気をつけなければならないんだな」という程度で読み進めていただければと思います。
土地を購入する前に確認しておきたい注意点について【契約編】
土地を購入する前に確認しておきたい注意点について【環境編】
1 用途地域について
用途地域は「都市計画法」という法律で決められているもので、快適な暮らしや商業・工業の利便性を高めるために、住宅地や商業地、工業地など分類することで「どこに何を建てていいか」を決めたものです。
ほとんどの人が土地探しをする場合、「住宅地」を探すことになると思います。
住宅地は、都市計画法で「住居系地域」という区分に定められています。
そして、「住居系地域」はそこからさらに、「低層系」「中高層系」「住居系」という3種類に分けられます。住居系は、「住居系地域の中の住居系」と、わかりにくい名称になっています。
チラシなどの物件概要に、「第1種低層住居専用地域」などと記されている場合、それは「低層系」を表しています。
一般的に「低層系」から「住居系」へ行くに従って土地の利便性が高まるため、土地の価格が上昇します。そして建物の規模が増加するため、建物同士の日影の影響が強くなり、大きな敷地だったり、南側に広い道路がある様な敷地でなければ、冬場の日あたりは悪くなってしまいます。
「住居系」の場合、現時点で隣の家が低層であったとしても、建て替えによって背の高い建物に変わってしまう事もあるので注意が必要です。
●低層系
「低層系」は主に低層住宅地としての良好な環境づくりのために整備された地域のことです。建物の高さに上限が設けられており、高くても4階建て住宅程度に制限されます。
住宅以外では、小規模な店舗や、限られた公共施設、小中学校、診療所(病院ではない)などが建設を許可されており、日当たりや静寂性など、住宅地としての落ち着きが保たれる地域と言えます。
●中高層系
「中高層系」は主にマンションなどの中高層住宅が主体になり、良好な環境が保てるよう配慮された地域です。高さの上限がなくなるため、規模の大きな建物も建てることができます。
建物種別の制限も緩和され、スーパーや病院、大きめの公共施設、事務所ビルなども建設が許可されます。居住に関する日常の利便性はありつつも、静寂を保てるような施設に限定されるので、バランスは良いといえます。
●住居系
「住居系」は、人が生活する環境として邪魔にならない程度の、社会的利便性の高い施設の建設が認められた地域です。住居以外の施設についての規模や種類の規制がさらに緩和され、ホテルやパチンコ店、規制範囲内の工場なども建築が可能になります。分かりやすく言えば、徐々に繁華街に近づいているというイメージです。
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2 建ぺい率と容積率
「都市計画法」上での土地種別について説明しましたが、もう一つ住まいづくりには「建築基準法」の上でのその土地の扱いを知っておく必要があります。こちらも「どんな家を建てることができるのか」に大きく関わるため重要です。
土地を検討する際に、よく「建ぺい率」と「容積率」という言葉が出てきますが、家を建てるときにはこれらの基準を守らなければ建築できません。
「建ぺい率」とは、敷地の中にどのくらいの割合で建物が建てられるかを示す割合のことです。
多くの場合、建物を真上から見たときの水平投影面積で表されます。2階建て住宅の場合であれば、1階と2階のうち、床面積の広いほうの面積で考えることができます。
例えば100平方メートルの土地の中に建物が2階建ての建物が1件あった場合、その1階の面積が70平方メートル、2階の面積が50平方メートルだったとすると、2階の50平方メートルは無視して、その土地の建ぺい率は70%となります。
「容積率」は、敷地の中の建物が、平屋か2階建てか3階建てかを問わず、合計床面積がどのくらいまで建てられるかを示す割合です。
上記の例と全く同じ条件だった場合、1階の面積70平方メートル+2回の面積50平方メートル=120平方メートルとなるため、容積率は120%になります。
実際には土地に接している道路幅などによって条件が変わってきます。細かく見ていくと複雑な計算になるため、気になる土地を見つけたらまずは確認してみるとよいでしょう。
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3 高さ制限
次に、土地選びの際によく問題になりやすく、しかも複雑で分かりにくい「高さ制限」という基準についてお伝えします。理解するのが難しい制限内容なのですが、建物デザインや建築可能な床面積に大きな影響を及ぼす要素ですので知っておきましょう。
主に「低層系」の土地での制約が強い「高さ制限」ですが、逆にこれがあるからこそ住宅地としての、落ち着きある環境が保たれているとも言えます。
「斜線制限」という言葉を聞いたことがある方もいると思います。その言葉からだけでは直感的にイメージしにくく、積極的に知ろうとは思えない制限です。その「斜線制限」のなかでも、土地購入の検討をする際にによく出てくるのが、「道路斜線制限」と「北側斜線制限」です。
小規模の宅地で3階建ての住宅の建築を検討される場合などは、特にこの制限が厳しく絡んできます。
斜線は斜めの線と書きます。敷地の境界線から敷地の内側に向かって一定の勾配で、目に見えない斜め線を想定してください。この斜めの線を、境界線に沿って横並びに連続発生させると、斜めの面を作り出されるはずです。「斜線制限」とは、住宅はこの斜めの面から上に飛び出てはいけないというルールのことをいいます。
この面から上に飛び出すという事は、隣の家に対して威圧的なボリュームを生むことになります。ひしめき合った住宅地が形成されないよう、建物を高くしたければ、境界線から後退するか、広い土地を買うしかないという仕組みです。
それでは、「道路斜線制限」と「北側斜線制限」、そしてマイナーですが重要度の高い「高度斜線制限」について解説していきます。
3−1 道路斜線について
「道路斜線」は、その名の通り道路境界線に沿って発生する斜線であり、基本的に用途地域を問わず検討が必要になります。
敷地の向かい側にある道路の境界線から、敷地の方向に向けて斜線が発生します。底辺1m、高さ1.25mの直角三角形で描かれる角度(約51度)勾配の斜線が想定されます。
これは道路自体の快適性や防災上の配慮のためと言われていますが、このルールによって、前面道路が広くなるほど建築計画が楽になるという側面があります。
「建築物の敷地は4m以上の道路に2m以上の範囲で接しなければならない」という建築基準法の定めがあります。前面道路の幅が4mに満たない場合、原則として4mに拡幅することを想定して、架空の道路斜線を発生させなければならなりません。
この場合の仮想の境界線は、基本的に既存道路の中心線から互いに2mずつ下がった位置を新規境界線とします。つまり、道路の中心軸はズレずに拡幅させるということです。
実際に販売されている土地では、道路中心から後退整備済みになっているか、「この位置になりますよ」という情報が事前に知らされる事が多いです。
それを考えても道路の幅員が4mに満たない場合は、対面側の土地がまだ後退整備されていな事が考えられます。その時は、反対側に拡張境界線を想定して検討を行います。
住宅を建築する場合、道路境界線ぴったりに住まいを建てる人はほぼ居ません。従って建物と道路境界線との間には一定の間隔が空く事になりますが、これは言い換えれば「建物が境界線から後退している」とも言うことができます。
道路斜線制限には「緩和措置」というものがあり、建物が道路境界線から後退した距離と同じ分だけ対面側の境界線も遠ざける事ができます。
つまり、建物の建築が可能な空間のサイズを変えずに、移動させることができるということです。
そのため、ひとつの斜めの面が遠ざかれば、反対側の敷地内に有効な空間をたくさん確保できることになります。だからといって建物の面積を広げて道路境界に近づけると、斜線も近づいてしまって意味がないので、道路境界線から後退させて建物を建てるのは、建物の高さを増やすことに効果的ということになります。
ただし、道路境界に高さ2m以上の門塀を建ててしまうと、上記の緩和が受けられなくなるという細かな規定もあるので、詳しい部分は建築会社に聞くようにしましょう。
3−2 北側斜線制限について
「北側斜線制限」は、敷地の北側にある境界線から発生します。
しかし、こちらは道路斜線制限ほどシンプルなものではありません。北側斜線制限は、北側が隣家の土地であっても、道路であっても発生します。そして、それらの境界線から真南方向に発生します。
つまり、境界線が北東を向いている場合や、北西をむいている場合、真南は境界線から直行方向ではなく斜めの方向になります。そのため発生する斜線も斜めの面になります。これは太陽光が北側の土地に一定以上差し込むようにするための決まりなので、道路斜線のように境界線に対して直行方向では意味がないのです。
そのため、真北の方角に対して敷地が振れている場合、極端に言うと境界線と平行に重なるくらいの角度を持って発生する事もあります。
このあたりがシンプルでないため、一見すると東側あるいは西側境界線に感じても、土地がほんの少し角度を持っているだけで薄い方向角度で南向きに発生するという複雑さがあります。
狭小敷地の場合に、屋根の頂点や軒先が苦しいという状況になりやすいので、注意が必要です。
先ほど、この斜線が北側道路であっても発生すると書きましたが、この場合には道路斜線の方が厳しい事が多いので、考慮しなくて良いです。
北側斜線は、地面から一定勾配で直接的に線が立ち上がるのではなく、低層系なら地表面より5m上空、中高層系なら10m上空から発生します。勾配の角度は、道路斜線と同じく、約51度です。
ちなみに、道路斜線には後退による緩和措置がありましたが、北側斜線制限には緩和措置はありません。
北側斜線制限は、低層系と中高層系で発生の高さが変わるため、コンパクトな敷地や、旗竿敷地における奥の取り囲まれた部分、東西に細長い敷地などの場合、3階建ての建設が困難であったり、建物のデザインが不自由になったりする事があります。
3−3 高度斜線制限について
斜線制限のなかにはもう一つ、「高度斜線制限」というものがあります。上記の2種類の斜線制限よりはマイナーですが、割と重要度が高い制限です。
これは都市計画法で定義されており、考え方が北側斜線制限とほぼ同じなのですが、設定が異なります。この制限の特徴は、全国一律ではなく各自治体がそれぞれ独自に設定しているという事です。
自治体が、地域地区の状況を見ながら必要な個所に設定しているという特徴があります。日照確保等に関する制限であるため、主に市街化された区域に設定されています。郊外のゆとりある環境でない限り、関わる場合が多いので注意が必要です。
「高度斜線制限」は自治体によって第1種、第2種、第3種、第4種…と様々な種類が存在します。この辺りは各自治体で確認いただきたいのですが、特に第1種や第2種が指定されると、北側斜線より厳しくなる場合もあるので、気をつけましょう。
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4 防火規制
物件概要に「防火地域」や「準防火地域」などの記載があるのを良く見かけます。
これは都市計画法に準じて各自治体が都市防災の観点から指定するものです。防火上の配慮を高度に求められるのが「防火地域」です。「準防火地域」はそれに次ぐもので、規制が緩和されます。
防火地域は、主に幹線道路付近や繁華街、都市機能が高い場所など、人の往来・滞留が多い地域に設定されています。
皆さんが土地を探す際に、検討される立地として比較的多いのが、幹線道路付近です。利便性は高い上に、幹線道路から少し奥へ入っただけで意外と静かだったりします。価格もそれなりにしますが、それだけの価値のある立地です。
しかし、気をつけたいのは幹線道路から20m、30mという範囲内によく設定されている「防火地域」です。
防火地域で建築可能な建物は、燃えにくい構造物として“指定”されたものに限られます。そのため、木造住宅に対しては強い制限がかかります。
一定の規模を超える建物は、避難や消火活動が大変になります。死者を出さないために、鉄骨造、または鉄筋コンクリート造にするか、木造であれば認定された仕様としなければならなりません。これらを「耐火建築物」といいます。
ただし、木造の場合、「床面積100㎡(約30坪)以下」かつ「地下を含む階数が2以下※地下がある場合は平屋まで」であるときに限って、制限が緩和され、次に述べる「準防火地域」と同等の建物にすることが出来ます。
耐火建築物は、基本的に構造物の中の木材を不燃の材料で覆う必要があり、室内で柱や梁を見せることができません。
また、耐火建築物はそうでない建物と比べ、耐火性能を高めるための様々な仕様を付加しなくてはならず、それに比例してに建築費が高くなる傾向があるので、あらかじめ知っておきましょう。
そして、「準防火地域」は、よほ大きな家でない限り、構造を規定されるような防火規制はなくなります。ただし、「準耐火」という性能を持たせなくてはいけなくなります。
これも、一定の燃えにくさを持たせた建物(災時に避難や消火活動が行われるまでの時間稼ぎが出来る建物)であり、「準耐火建築物」といいます。
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5 まとめ
選ぶ土地の法規制によって、実現したい建物の形状や、建築費に影響が出てくるという事をご理解頂けましたでしょうか。
慣れない専門用語が多く、混乱してしまった方も多いかもしれませんね。
ここでは一般的な家づくりを行う場合に踏まえておきたい部分に限定して、ご紹介しましたが、細かく言うと、さらに多岐にわたる項目があります。
法律に関しては素人の方が判断できるものではありません。ここで紹介したものはあくまで参考程度に頭に入れておくとよいでしょう。
より詳しいことが知りたいという方は不動産会社に相談するようにしましょう。
土地を購入する前に確認しておきたい注意点について【契約編】
土地を購入する前に確認しておきたい注意点について【環境編】