都市に住みたい。小さい土地だって豊かに住みたい。そんな希望を持って狭小住宅を検討している人も多いのではないでしょうか。
「狭小住宅だからといって収納は諦めたくない」
小さい家でもやはりそこそこの収納は欲しいものです。
この記事では、これから狭小住宅の建築を検討しているけれど、「十分ば収納が取れるか心配」「どうすればもっと収納が取れるの?」とお悩みの方に、建築のプロの視点でおすすめの収納空間を作るコツをお伝えします。
1 狭くても十分な収納空間を作るコツ
1-1 合理的に間取る
まずはいかに合理的な空間活用ができるか、というところから考えてみましょう。
例えば、廊下など居住スペース以外の空間(通過動線)を最小限にしたり、他の空間との兼ね併せや一体化など考えることができます。
最近では断熱技術が進歩しましたので、玄関と居間を一体化しても寒さの影響を受けにくくなりました。
そこで、例えば目線が隠れる高さの収納を造り付けて空間を仕切るという考え方があります。
つまり、「小分けにしない空間づくりによって主要な居室をなるべく広く見せ、同時に“壁”という厚みのある存在を無くし、そうして生まれる空間を収納に充てる」というものです。
また、これは好みが分かれますが、階段室を居間内に配置するいわゆるリビング階段を設置することも同じように、居室を広く見せ、生まれた空間を収納にすることができます。
階段は縦へ抜けた空間ですので、居間に開放することで広がり感が得られるとともに、うまくすれば明るさも確保できます。
階段下は物入れとして使っても良いでしょう。ただし、低い部分ほど使いにくくなるため注意が必要です。
また、空間を合理化した分だけ別な場所にしっかり収納を確保し、階段周りは開放的に使うという方法も良いでしょう。
1-2.立体的な空間利用をする
家族の団欒の場である居間は可能な限りの広がりが欲しいですが、個室はある程度割り切ることもできる空間です。
限られた空間利用が前提となる狭小住宅の中で、座る・寝るという低い利用のベッドや机については立体的に組み合わせて活用する方法があります。
これは特にお子さんのお部屋として有効であり、2段ベッドと同じ考え方です。
そうすることで部屋面積を絞り、その分を収納に充てることが出来るようになります。
また小屋裏空間を利用する方法もあります。
2階建ての場合、小屋裏の天井高が1.4mを超えると3階建てに見做されますが、お子さんの寝場所でしたら1.4m以下でも充分使えます。
ほかにも、階の床下利用も、漬け物を仕舞っていた昔に比べると多様性を持たせられる様になりました。床下を室内と同等に扱えるようになったのです。
これは断熱・気密技術の向上によるところが大きいのですが、適切な処理を行えばかなりの容量を賄う事ができるようになります。
また重さのあるものでも安定して格納できます。
ただし床下収納にも当然一長一短はありますので、興味のある方は専門家にしっかり相談するようにしましょう。
1-3 寸法には要注意
収納は十分な空間が確保できればそれで良いという訳ではありません。バランスが悪いと収納空間自体が無駄な空間になりかねません。
例えば布団の収納が必要だからと言って従来の押入と同じ奥行きを確保しても、布団の数枚しかないのであれば非常にもったいないでしょう。
また人が中に入り込んで使う収納(納戸や食品庫など)の場合、収納物の大きさや住む人の体格についての考慮は必要ですが、人が立つ空間としては45㎝~50㎝程度の幅があればなんとかなる場合もあります。
1-4 便利用品を使えば費用が抑えられる
お手軽なのがクリアボックスなどの市販のものを使い収納を確保する方法です。
今ではホームセンターや100円均一などで組合せによって効率的に格納できるボックスなどが数多出ています。そういったものに合わせた棚を作ることにより、より無駄なく費用を抑えた収納も可能となります。
収納を突き詰めて行くとどうしても造り付けにしたくなってきますが、造り付けるほどに費用もかかります。最低限の造作で最大の効果が得られるのが理想ですね。
1-5 収納は棚だけにあらず
収納を考えるときにはどうしても「棚を増やす」ことばかり考えがちですが、棚、棚、棚、という考えだけでなく、薄い物や小さな物なら壁に引掛けるという考え方もしてみましょう。
例えば、壁の下地を画びょうや釘などを刺せる素材にしておけば、引っ掛け金具や吊り下げ用品を活用することも可能です。
極端ですが「仕上をしない」なんていうのも、場所によってはアリでしょう。
壁の表面を合板(ベニヤ板)にしてしまい、金具などを取り付け、ダメになったら合板ごと張替えてしまうという方法もあります。
また、あえて一部だけ仕上げをせずに壁の裏側が見えるように、その凹んだ部分を収納として有効活用することもできます。
ただしこの場合、壁の反対側への気遣いや配線配管の納めなど、逆に手間がかかってしまう場合もありますので、やられる場合は事前に業者に相談されることをおすすめします。
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2 まとめ
狭くても十分な収納を確保するコツは、収納をつくろうという前に、間取りをいかに合理的に兼ね合わせるかも重要なポイントとなります。
平面的な配置計画だけでなく立体的に空間を考えること、場合によっては少し思い切って空間にメリハリをつけることも効果を生みます。
そうして考えて行く中で、収納スペースが生まれてきます。
もしお若いご家族なら、ご家族の将来的な変化も考慮して造り込まないことも考えてみましょう。
例えば可動式の棚で空間を仕切ってしまうなど。可変性のある空間は、仕舞うという行為にも自由度を与えてくれます。