
最近、建売でなく注文住宅にしたのは「自然素材の家を作りたかったから」という理由を挙げる方がとても増えています。
では「自然素材の家」とはどんなイメージでしょうか。
また、自然素材の家ならではのメリットやデメリットもあることを知っておく必要があります。
今回は自然素材の家についてわかりやすく解説します。
自然素材の家とは?
自然素材の家というと、「ログハウスのように木だけで造った家」「伝統技法で造られた旧家」という方から「なんとなく健康に気を使ってある家」という方まで、人によって持つイメージは様々だと思います。
しかし、自然素材の家に関しては厳密な定義がありません。
一般的には、内装などの仕上げ素材として無垢の木や天然素材塗り壁、石や和紙など、文字通り「自然の素材」をふんだんに使った家のことを総称しています。

杉坂建築事務所施工
したがって、たとえ内装の一部にビニールクロスを使っていたとしても、メインが自然素材の仕上げであれば「自然素材の家」と呼ぶことができるでしょう。
自然の素材感が好きという方が増えてきたことはもちろん、自然素材の家を希望する方の目的のひとつとして近年多いのが、「シックハウス症候群」対策です。
最近はニュースにも頻繁に取り上げられるようになりましたが、人工素材の建材に含まれる化学物質が発する有毒ガスに反応し、アレルギーのような症状が発症するのがシックハウス症候群。
これを未然に防ぐ、または既に今の住居で発症しているため対策を練る、といったことを目的としているのです。
このように、「自然素材の家」の定義や目的は実に多岐に渡ります。
つまり、施主である当人と建築家、施工者などの間でそれぞれにイメージするものが違うことが往々にあります。
よって、自然素材の家を建てる際には、各業者とのイメージの擦り合わせを綿密に行いましょう。
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自然素材の家のメリット
自然素材の大きなメリットとしてよく挙げられるのが、その抜群の素材感です。

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上の写真は大げさかもしれませんが、「本物」の自然素材の家と言って良い、人工的な材が無い時代に造られた古民家です。本物の素材は時とともに味わいが深まり、価値を高めるといっても良いでしょう。
自然界ならではの色むらやざっくりとやわらかな質感、職人の技によるニュアンスある仕上げ面は、見た目にも触り心地も気持ちが良いものです。
もちろん、機能面でも大きなメリットが挙げられます。
例えば無垢材のフローリングですが、既製品の合板フローリングにありがちな夏場のベタつきや冬場のヒヤリとした冷たさとは無縁で、どの季節にもちょうどよい体感温度と湿度を保ってくれます。
いつも素足で心地よく過ごせることは、日々生活する上でとても大切なポイントですよね。
また、壁については、珪藻土や漆喰といった左官壁、無垢の板壁などが代表的な自然素材です。
ビニルクロスの様に接着剤を使わず剥離の心配も無い事から、古びて行く質感を長く楽しむ事ができるでしょう。
漆喰や珪藻土壁は「呼吸する壁」とも言われ、湿度の高い時には水分を吸いこみ、逆に湿度の低い時には内部に溜めておいた水分を微量ずつ放出して室内の乾燥を緩和する性質を持っています。
またニオイの吸着効果もあると言われ、コーティング剤と異なり壁に直接建材として塗るため、半永久的に穏やかな効果が続くのが大きなメリットです。
近年の住宅は、気密性・断熱性が非常に高くなりました。
もちろん性能が上がるのは良いことですが、一方で湿気やニオイが室内にこもりやすいという弱点も持ち合わせています。
また、それをカバーするため法律で義務付けられている24時間換気システムを稼働させた環境では、特に冬場、室内が乾燥する傾向にあります。
調湿効果のある建材を利用することで、最近の住宅の良い機能を保ち欠点をカバーすることにつながるのです。
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自然素材の家のデメリット
ぬくもりがある質感と快適な室内環境づくりに適した自然素材ですが、デメリットもいくつか持ち併せています。
但しそれは自然素材ならではの豊かな特徴とも捉えられます。必ずしも住まいにダメージを及ぼしているもので無い事が多いですので、少し寛容に捉えて戴く事も知って戴けると幸いです。
例えばキズについて。無垢フローリングでは椅子の脚や掃除機、車輪のついたおもちゃなどに対する耐性は特に機能性重視で生産された建材フローリングにはかないません。
ですが表面に極薄のシートが貼ってある建材商品は剥がれてしまう無残さはなく、余ほどで無い限り使い込まれた味となって行きます。
また吸放湿性が高い事の裏返しで短期的な汚れや水に強くありません。飲み物・食べ物や水、ドロが付けばシミになりやすく、撥水性を高めた建材フローリングにはかないません。ですが建材フローリングが湿気の影響で徐々に衰えて行く様な事はないため、断熱・気密性能の低い古い住まいのリフォームなどには特にお勧めです。
長時間水がついたまま放置すれば素材が傷みやすいですが、それは人工フローリングも同じです。
湿度の変化により木材なら反りや割れ、左官材なら無垢の窓枠材や巾木材などとの間に隙間が生じてしまうリスクも持ち併せています。
これは美観上の問題で、許容できるか出来ないか、という事になります。適正に調達され施工された素材であれば、通常変形によって住まいにダメージを与える事はまずありませんので、落ち着いて観察し、ご依頼先に確認して戴けますと幸いです。
そして、一番大きなデメリットといえば、実はコスト面。
材料費はもちろん、左官などは熟練の職人による施行が必須ですので、工事費も高くなってしまうという特徴があります。
床暖房対応のフローリングは、無垢材と建材とで非常に大きな差があります。
従ってもしコストを抑えたいのであれば、優先順位をつけて自然素材の採用を検討して戴くことをお勧めします。
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メンテナンスについて
自然素材の家というと「メンテナンスが大変」というイメージを持っている人も多いようです。
しかし、実はそれほど大変ではなく、またお手入れの仕方次第で既製の建材よりも豊かに長持ちさせることができるのです。
例えばこれまでご紹介した代表的な自然素材のメンテナンス方法は、以下の通りです。
無垢材のフローリング
普段は拭きはせず、乾拭きを基本のお手入れとします。もしも汚れが気になる場合は、堅く絞った布で水拭きすると良いでしょう。
万が一キズがついた場合は、市販の紙ヤスリ等で軽く削ってみてください。表面が滑らかになりキズのない平坦な仕上がりが再生できます。
これは、100年以上建物を使うことが当たり前であるヨーロッパの住宅では普通に取り入れられている手法です。
繰り返し削ることできれいな床の状態を長年保ち、財産である家を良い状態に保つという考え方が浸透しています。
ただし無垢フローリングは無塗装品やワックス仕上げ程度であれば問題ありませんが、塗装ものだとヤスリをかければ落ちてしまいます。
また、耐久性を高める為にウレタンコーティングしているものもあり、同様です。
無垢材用やリペア用の塗料も市販されていますので、多少の斑は気にせず目を細めながらOK!と言う事も必要です。
左官壁
左官壁の場合、仕上げの手法によっては非常に高度な補修となる場合が多いです。
特に珪藻土や聚楽(土壁)などは独特の凹凸感がありますので、安易に補修すると風合いを損ねてしまいます。
腕に覚えが無い限り、先ずはご依頼先に確認なさる事をお奨めします。
漆喰の場合、多少のキズや汚れは消しゴムと細目の紙ヤスリで滑らかにすることができます。
ひどくない手垢程度の汚れであれば消しゴムでこすることで割と対応可能です。拭いても取れないような汚れでも簡単に消すことができますが、こすったところがきれいになり過ぎるとキリがなくなってしまう点に注意です。
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まとめ
自然素材の家の特徴やメリット、デメリットについてご紹介しました。
総合して考えると、
・質感が良い
・化学物質による健康被害を気にする方に合っている
・どの季節でも室内環境を穏やかに快適に保つ
・適切なメンテナンスで住宅を長持ちさせられる
・自然素材はコストと手間がかかる。デザインと機能、予算とのバランスをみて選択を
ということが言えるでしょう。
注文住宅を建てるのは一生で一度きり、という方も多いのではないでしょうか。
住宅は毎日快適に過ごせる環境が大切であり、貴重な財産でもあります。
納得のいく素材選びの参考になればと思います。