外壁材を選ぶ際にひとつの大きな選択になるのが、サイディングをどの種類にするかということです。
主に「窯業系サイディング」「金属系サイディング」「木質系サイディング」「樹脂系サイディング」の4種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
今回の記事では、サイディングとは何かという部分から、それぞれのサイディングの特徴や使いやすい状況などについて解説していきます。
1 サイディングとは何か?
サイディングとは、外壁などに用いられる板状の建材の総称で、具体的な壁材のことではありません。
工場生産のため、品質が均一で、施工性が高いという特徴があります。
材質によって窯業系、金属系、木質系、樹脂系などに分類することができ、素材によって性能や価格、デザインなどのバリエーションが豊富です。
新築・リフォーム問わず取り入れやすい建材であることから、ハウスメーカーや建売住宅をはじめ多くの住宅で使われています。
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2 サイディングの種類と特徴について
2-1 窯業系サイディング
窯業系サイディングは右の写真のような外壁素材であり、セメントに木質繊維を混ぜ合わせたものを主な原料としています。
表面塗装によって耐久性を高める工夫が施してあり、最近では光触媒技術などのナノテクノロジーの発達によって長期的に美観を保つ窯業系サイディングも増えています。
ショールームや実物サンプルなどで確認すると分かりやすいのですが、厚いものの方がより本物らしい質感があり、防音性や歪みにくさなどの効果もあります。
ただし、その分価格も上昇します。
メンテナンスに関しては、サイディング自体の塗装に加えて、継ぎ目に充塡するシーリング材の劣化にも気をつけなければなりません。
シーリング材が劣化し隙間ができることで、雨水が侵入し躯体に悪影響を及ぼす場合もあるので、特に気を配りたいところです。
2-2 金属系サイディング
金属系サイディングとは、銅板や亜鉛、鉄板、ガルバリウム鋼板やステンレス板等を使った金属製仕上げのサイディング材のことを指します。
最近では特にガルバリウム鋼板の商品が、芯に断熱材を詰めたものが販売されるようになり、他の素材に比べると製品自体の断熱性が高いため、快適性を重視する方におすすめです。
重量が軽く、建物自体にかかる負担が少ないことも特徴で、地震の際に揺れを軽減してくれます。
足場を組めないような箇所でも施工し易い特徴があるため、リフォームなどに向いている素材でもあります。
金属特有のシャープな印象を与える素材であるため、昨今ではモダンテイストの住宅への使用が増えてきています。
ただし、金属系サイディングには様々なデメリットもあります。
まず、屋根の素材に金属系サイディングを採用した場合、雨音が住宅内に伝わりやすいという事が挙げられます。
ただ、近年は断熱性能が高くなっており、前述のような断熱材充填商品もあるため、計画性を持って採用すればクリアできるでしょう。
また、薄い金属素材であるため外壁が傷つきやすいという特性もあり、風で飛んできた細かい砂や石、場合によっては傍らに植えた樹木の枝がこすれることで表面にキズがつくことがあります。
それによってサイディングに施された塗膜が劣化し、美観が損なわれることがあります。
さらに、金属は温度変化によって膨張したり収縮したりしてしまうため、変形してしまうことがあります。
天候によっては、跳ね返り音や軋み音などが発生することもあります。これ自体がサイディングに大きな被害を与えることはそうありませんが、そういう素材であるということも踏まえておくと良いでしょう。
そして、サビが発生するということもあります。
銅板のように緑青を形成して防食効果を持つ素材や、ステンレスのように合金として複合化された素材によってそれ自身が耐久性を持つタイプのものもありますが、普及率の高いトタンやガルバリウム鋼板は、表面をメッキ加工することで耐久性を保っています。
逆に言えば、表面のメッキ層にキズがついてしまうと、水や空気に触れることでそこから劣化し、サビが発生する原因になります。
特に海岸近くでは塩分の多い風を受け続けるため、一部の損傷によって錆びが進みやすいです。また近年は酸性雨の影響で劣化することもあります。そのため、塩分や酸性雨の影響が強い地域にはあまり向かない素材です。
一般的な地域では特別に敬遠する必要はありませんが、加工性の良い素材である事から、切断や折り曲げによって形成されるため、端部や接合部には注意が必要です。
金属であるため丈夫な外壁材と思われがちですが、定期的な点検・メンテナンスを行うことはとても大切です。
2-3 木質系サイディング
木質系サイディングは、天然の木材を板状に加工したもので、現在は主に外壁、軒裏などに採用されています。
そのままでは耐候性が低いので、塗装を施して耐久性を高めるのが一般的です。
天然素材であるため、断熱性や保温性に優れていて、何よりも見た目の温もりとエイジング(経年によって出る変化)の味わいを感じる事ができる外壁材です。
価格は、樹種や節の有無、環境対応を考慮した処置等によって変動します。
デメリットとしては、まず天然木を原料とするため、他の外壁材より防火性という点で劣るということが挙げられます。
このため、防火指定のある地域では、使用できないものがあります。しかし最近では防火認定を受けた製品も増えてきており、準防火地域では、木質系サイディングを使用した住宅も増えてきています。
また、木材なのでメンテナンスや維持管理に手間がかかるというのもデメリットです。
特に風通しの悪い場所では雨に濡れた後乾きにくいため、カビが発生しやすく、カビは腐食の原因になります。このため、環境を踏まえて素材を選定し、その後も経年による状態を見ながら塗替えを行う必要があります。
塗装では、塗料の選定に気を付ける必要があります。
塗料は出来る限り塗膜を張らない浸透性のものを使用しなければいけません。木の呼吸を妨げてしまうと、外壁材としての寿命を短くしてしまうことがあります。特に塗替えの際には塗料に気を付けたいところです。
このように、取り扱いとしては手間のかかる素材ではありますが、その質感は人の目を引き、和ませてくれます。
その特徴から、木質系サイディングは、一部にアクセントとして採用する方法や、メンテナンスし易い1階廻りのみに採用するといった考え方もあるので、ご興味のある方は検討してみるとよいでしょう。
2-4 樹脂系サイディング
主原料に塩化ビニル樹脂等を使用した外壁材です。
日本ではあまり馴染みは無いですが、アメリカやカナダの住宅では一般的に使われています。
樹脂が原料のため撥水性があり、吸水・吸湿性が殆ど無いため、水分を原因とする劣化が起こりにくいという特徴があります。また、シーリングを使わない工法が確立されているので、目地の補修がいらないというメリットがあります。
塩化ビニルは燃えにくい性質があるため、防火上も有効です。一般的な窯業系サイディングに比べると、重量も1/10以下なので、既存の壁の上から取り付けることも可能で、リフォームにも適しています。
デメリットは、樹脂という原料の性質上、重厚感や高級感を演出しにくいという点です。そのため、軽快な印象の住宅に向いています。
また、日本での普及率が低いため、取り扱う業者が少なく、他の外壁材に比べてバリエーションが少ない傾向があります。よく見られるのは、アメリカのコロニアル様式住宅のような白やパステルカラーの外壁や、型押しされたレンガ調や石目調の外壁などです。
薄い素材であるため、遮音性は低いです。そのため、断熱材と併用することによって、遮音性を高めるという使い方もあります。
樹脂は一般に紫外線に弱いと考えられていますが、実際は混和材などの効果で、耐久性が高くなっています。とはいえ、基本的に樹脂は紫外線の影響によって硬化し、割れが起こりやすくなる傾向もあるため、使用時にはUV対策などを確認する必要があります。
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3 まとめ
サイディングには上記の通り、様々なデザインや性能、価格のものがあります。
たくさんの選択肢から資金計画や好みに合わせたものが選べるようになり、汎用性に富んだ素材です。特殊な事情やこだわりなどがない限り、外壁サイディングは大きな失敗をしにくい素材といえるでしょう。