家の外壁というと、現代風のサイディングや和風な漆喰、洋風レトロなレンガなど、単に外壁といっても思い浮かべる外壁材の種類は人によって異なるでしょう。
外壁材にも様々な種類が販売されており、その価格帯や機能性、特徴などはまったく異なります。
機能面や見た目、価格の安さ、それらのバランスで選ぶなど、外壁材を選ぶ基準は人それぞれです。
ですが、それぞれの特徴を知り、自分がどういう家にしたいか、そして周辺環境とのバランスはどうか、こういったことまで考えなければ本当に満足のいく外壁材選びはできません。
そこで今回の記事では、数多く存在する外壁材の種類と、それぞれの特徴などをまとめて説明しますので、ぜひ外壁材選びに役立ててください。
外壁材の種類と特徴
サイディング
窯業系サイディング
窯業系サイディングは、現在多種多彩な商品が出ており、都会的な印象も相まって人気があるサイディングです。
住宅全体が軽い感じに仕上がってしまうという欠点はありますが、商品によってはテクスチャのリアル感を出したり、重厚感を出したりすることもできます。
更に、最近はナノテクノロジーを用いた表面処理によって高い耐久性を誇るものも出ています。
大判のボードを金具で固定していく工法のため、施工がスピーディであり、工期が短縮できるというメリットもあります。
金属系サイディング
金属系サイディングは、シャープな印象があり、デザイナー系の住宅などに取り入れられることが多いです。
主に使用されるガルバリウム鋼板は、鉄が基材であるものの、アルミと亜鉛の合金メッキ処理によって耐久性が大幅に向上した素材です。
省メンテナンス性を売りにしているため、イニシャルコストは割高ですが、長期的に見ると安く抑えることができるという魅力もあります。
また金属サイディングは全般的に軽量である事がメリットです。
リフォームの場合も既存外壁にカバー工法で施工しても、建物に対する構造的な負担が少ないという点でお勧めできる素材です。
木質系サイディング
木質系サイディングは、文字通り木材の素材のことです。
天然木材の質感は、ほっとする様なやすらぎを与えてくれます。ただし、防火系の地域では導入にハードルがあります。燃えにくい素材として国の認定が取れていないと、使用が難しいのです。
これに対して、専用処理を施して認定を取った製品がありますが、総じて高価です。
また、屋外に晒され続けると劣化が進むという木材特有の性質があるため、劣化を防ぐために数年スパンでメンテナンス費用が必要になります。
こういった理由から、外壁全体ではなく、一部分に採用するという手もあります。アクセントとしてデザイン効果を出しやすい素材なので、一部分でも効果を発揮してくれるでしょう。
樹脂系サイディング
樹脂系サイディングは、日本ではあまり馴染みがなく、展開されている商品は少ないです。
流通量が少ないため、価格も割高になります。商品デザインのバリエーションは複数存在しますが、中でも一般的なのは下見板張り風のデザインでしょう。
アメリカの古いコロニアルスタイルに見られる様なデザインです。木ではないため、さらっとしたさわやかな雰囲気があります。
モルタル
モルタル壁とは、一般的にラスと呼ばれる金属製の網の上に、砂と水、セメントを混ぜて練り上げた軽量モルタルを、左官コテで塗りつけたものを下地として用いる外壁の「総称」です。
1980年代まではモルタル壁が主流でしたが、施工に時間がかかることに加え、サイディング材が普及してきたこともあり、採用数は減少傾向にありますが、それでも日本の住宅の多くはモルタル仕上げになっています。
最終仕上げの形状によって「リシン」「スタッコ吹付」「吹付タイル」「高意匠性仕上げ塗り材」の4種類に分けられます。
リシン
リシンは、骨材(細かく砕いた石や砂)に樹脂やセメント、着色剤などを混ぜたものを吹付けによって施工するものです。
骨材を含ませる事によって、簡易的に表情付けをしており、表面がザラザラと凹凸のある仕上がりになります。
既存の調合材をそのまま吹付け可能なため、安価であることも特徴です。
モルタル下地の外壁の中では採用率が高く、最も一般的な仕上げともいえます。
昔は経年によるひび割れが縦横に入ってしまうものをよく見かけましたが、最近は素材を構成する原料のバリエーションが増え、非常に割れにくいものもあります。性能面ではコストパフォーマンスが高いと言えます。
リシン搔き落し
また、同じリシンという名がつく「リシン掻き落し」というものもあります。
これはリシンの原型に近いものなのですが、吹付けリシンとは別物です。基本的に樹脂は配合されておらず、吹付けでなく左官で仕上げる形になります。
モルタルや石灰系を主成分にして、骨材・着色剤を混ぜた素材を鏝(こて)で厚塗りし、乾き切らないうちに硬質の金ブラシなどを用いて表面を粗く引っ掻いて仕上げるというものです。
手間のかかる高級な仕上げになりますが、その分独特の素朴な凹凸感が出て、風情を醸しだしてくれます。
スタッコ吹付
リシン吹付が薄付けの塗膜仕上げであるのに対し、スタッコは厚付けの仕上げ塗材で5~10ミリ程度の厚さで吹付ける仕上げです。
スタッコはもともと欧米から入ってきた素材で、当時は左官で粗い感じに仕上げる石灰・粘土系の仕上げ材でした。
しかし、現在使われているものは合理化されたものであり、言わば「スタッコ調仕上げ材」です。それが逆に一般化し、定着したものが「スタッコ吹付」だといえます。
見た目はボリューム感があり、表面は細かな凹凸がふんわりとついた感じでザラザラしています。
弾性系もあり、モルタルの弱点であるヒビ割れが起こりにくい種類のものもあります。
スタッコ吹付は、建物に重厚感を与えてくれる反面、目の細かい仕上がりのため、汚れが付着しやすいというデメリットもあります。
吹付タイル
タイルと名前についていますが、焼き物のタイルとは別ものです。正式には「ボンタイル」といいますが、略して用いられることがほとんどです。
複層仕上げ塗材というカテゴリに属し、リシンやスタッコと違って3~4層構成で仕上げるのが特徴です。
厚さは1~5mm程度。下層で素地調整を行ったうえ凹凸模様などを施し、上層でコーティング仕上げを行います。
艶のあるテクスチャで、汚れにくさや良好なメンテナンス性などが考慮されています。
合成樹脂エマルションを結合材として、さらに防水性を高めたものに「弾性タイル」というものもあります。
高意匠性仕上げ塗り材
前項の吹付けタイルは、いくらかのバリエーションがありますが、上記3種は基本的に多様なデザイン性を持っている素材ではなく、割とシンプルに、均一に仕上げることが前提となっています。
それに対し、用いる道具によって非常に意匠性の富んだ仕上がりを実現する塗り材です。
例えば鏝で仕上げるにしても、木鏝か金鏝か、押さえるか、引きずるか、斑(ムラ)付けするかなど、職人の腕次第で表情を変えられ、ほかにも櫛や型付きローラー、変わり種ではスタイロフォームなどをアイディアで用いることにより、和風から洋風、あるいはそれらにとらわれないテイストまで、多彩な表現が可能です。
素材としては樹脂材と骨材がそれぞれメーカー独自に調合されており、細かなグレード/バリエーションによって防耐火性・防カビ性などの機能性を持たせたものもあります。
仕上げ方法や、耐久性とコストのバランスを考えると、「他よりも大きく優れている」とは言い切れませんが、外観を特徴的にイメージ付けしたい場合、ご検討いただくと良いでしょう。
レンガ
レンガはイメージしやすいかと思いますが、粘土に泥・砂などを加えて練った材料を、型に入れて乾燥、もしくは素焼きした建築材料です。
レンガの持つ独特の風合いは、土に含まれる成分や乾燥・焼きムラの違いが作り出す自然な風合いによるもので、その色・形を、接合する目地が引き立てることによって、温かみのある雰囲気を醸し出します。
といっても、こうした本物の組石レンガ造を実現するケースは地震国の日本においては極めて稀であり、木造、鉄骨造、RC造に被せる、言わば「化粧仕上げ」のための素材としての採用がほとんどです。そのため、サイディングというよりも、非常に高価な仕上げと言っても良いでしょう。
また、外壁がかなりの厚さとなるため、都心部などの敷地面積が狭い場所においては、居住面積が圧迫されるため、あまり適しません。
ただし、先にも述べたとおり、奥行のあるその素朴な印象は、厚みのあるレンガならではとも言え、アクセントとして部分的に用いるだけでも住まいに華を添えてくれます。
低層部の一部分であればコストも抑えられるので、ご興味あれば試してみるのも良いのではないでしょうか。
タイル
タイルは粘土、陶土、長石、石英などを砕き、成型し高温で焼き固めた外壁材です。
タイルは、モルタルで下地をつくる作業や、乾き具合を確認しながら適切なタイミングで貼って行く経験や勘による手間も軽減されるため、工期の短縮も図れるのが魅力です。
その代わり、下地ボードや取り付け金具など、新たに必要とされる部材も出てくるため、小規模な住宅の場合は、あまりコストダウンにはなりません。
タイルは吸水率により「陶器質」「磁器質」「せっ器質」の3種類に分かれ、外壁で使うときは耐久性の面で吸水率の低い磁器質とせっ器質が望ましいです。
1-3で述べたレンガも、薄くしたレンガタイルとして存在します。こちらの方が本家のレンガより一般的で、薄くてもそれなりに深い味わいを醸し出すことができます。
塀に用いられる事も多く、鋳鉄製の門扉など、素材を活かした手造りのものとも非常に相性が良いです。
タイルは他の外装仕上げ材に比べ、総じてコストが高めです。
しかし、長期的なメンテナンスも加味して考えると必ずしもそうと言い切れません。
イニシャルコストだけでなく、長期的にランニングコストも考えるのであれば、重厚さがもたらす高級感ある佇まいが得られ、おすすめできる素材といえます。
漆喰
昔の日本家屋には外壁に漆喰を用いたものが多くありました。
その土地で採れる素材を長年の知恵と工夫により建築材として確立してきたという側面もありますが、火に強いという特性から、木造家屋の外壁材として使用するのに良かったという側面もあるのでしょう。
現在では、日本に古くから伝わる本式の漆喰が外壁に用いられる事は少なくなりました。
合理的な外装材がどんどん生産され、科学技術の力で耐久性高く、コストを抑えて採用できる様になったことがひとつの要因です。
本来の漆喰壁は、熟練した職人が時間を掛けて仕上げることで、豊かさと耐久性を実現できる素材です。
安くて良い(良いという基準については様々ですが)ものが求められ、伝統的な職人技を継承する社会形態が薄れる昨今、そうした「本物」に良さを求める傾向が減少してしまうのは無理もないのかも知れません。
漆喰や木材などの天然素材は、雨が当たり、風と共に埃が吹付け、陽が当たり…ということが繰り返されると、紫外線の影響や膨張・収縮などにより成分の劣化が現れやすいのです。
このためできる限り軒・庇を深く採ることが望ましいです。日本の民家が皆その様な深い軒を形づくっている理由もその一つです。
また、漆喰は水分の放出と共に成分が硬化して完成する、柔軟性の低い素材です。外壁全体が一つの面として塗り上がった場合、どうしても大きな面であるが故に、地震や風などによる震動時に歪みが出やすく、大小様々な割れが発生しやすくなります。そして部分的な割れを補修するために全体に手を掛けないといけなくなるというデメリットもあるのです。
しかし、敷地環境や計画建物の形状から実現できる様であれば、とても豊かな佇まいが実現できます。可能であれば層二階よりも1階と2階が屋根で区切れた様な、いわゆる“下屋の張った”かたちが望ましいでしょう。
なるべく壁の面が小分けに区切れた方が、歪みの度合いも少なくなります。
そして、出来るだけ深い軒があると、なお良いです。雨が多い日本では、昔からそうした環境に対抗し、順応する様に住まいを形成してきました。それがオーガニックで環境に優しい日本の住まいになっていたのです。
漆喰壁は下塗り-中塗り-仕上げ塗りと、他の外装材に比べて工程が多く、一層塗るごとに時間をおいて水分を飛ばす必要があるため、手間暇のかかる素材です。しかし、手間がかかるからこそ素晴らしい佇まいが実現できるともいえます。
板壁
板壁も、日本で古くから存在する外装材です。特に杉などの横板を重ねながら張り上げ、細い縦の桟木で押さえる仕上げは「南京下見張り」という名で親しまれ、お城から住まいまで沢山のものに採用されていました。
板壁を採用する場合は、できる限り水に対する耐久性が高い樹種や部位を用いることが重要です。基本的に生育量やコストの点から広葉樹は流通していません。
国産針葉樹であればヒバやヒノキ、スギの赤身材がおすすめです。
外洋材であればベイヒバやマツ類などがありますが、レッドシダー(米杉)が良く使われます。
ただし、自然素材であるが故に、板を張ってそのまま放置してしまうと、湿気や紫外線などの影響で劣化し、腐朽が進んでしまいます。このため維持管理が非常に重要となり、塗装による保護が欠かせません。
板壁にはこの定期的なメンテナンス費用がつきまとい、割とランニングコストの負担が大きくなるので、しっかりと理解して採用しましょう。
ちなみに足場をかけて外装板壁の塗装直しを行なう場合、建物規模・形状にもよりますが、50~100万程度が一般的です(あくまでも外壁のみの場合であり、屋根や樋、板金などは別です)。
板壁は1枚1枚大工が張り上げて行く必要があるため、手間のかかる材です。素材自体の価格もあるので、例えばモルタル下地の吹付け仕上げに比べると5割増し程度にはなります。
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まとめ
外観は、形状やデザインによるところも大きいのですが、使う素材も住む人の愛着に影響を及ぼす要素と言えます。
長い目でメンテナンスがかかってしまうのは大変ですが、逆にその様な素材を用いて出来上がった佇まいが満足感を与え、「維持して行きたい」というモチベーションに繋がる事もあります。
見た目の雰囲気で素材をどう選ぶかだけでなく、周囲環境との関係性、屋根の掛け方、部分部分での割り付けの適/不適などなど、維持管理とバランスするための様々な考え方もあります。
外壁を決める際は、設計士とそのような部分も相談してみることをおすすめします。